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(2024/2/26 05:00)
リスク分析“最後の砦”
(総合1から続く)小さな頃から宇宙が好きで、物が落ちるといった身近な物理現象に興味を抱き、大阪大学大学院理学研究科では物理学を専攻しました。原子核理論研究室に所属し、高温・高圧状態での原子核の研究に打ち込みました。数理的な素養を生かして新しい分野に飛び込もうと、就職活動ではいろいろな業界を回りました。物理の自由研究のようなインターンシップ(就業体験)にめぐり会い、金融の面白さを感じたのが入社の決め手でした。
最初の配属先で4年目のクオンツサイエンス課では、金融工学を使って株式や金利などの原資産から派生した金融商品(デリバティブ)の時価評価を計算しています。商品のリスク・リターンを踏まえて理論的な価格を分析するモデルを開発する業務です。モデルづくりの過程は、本質的な要因を取り出して現象を理解する点で物理と似ています。使い手である社内のトレーダーと対話を重ね、要望を受けて改善を繰り返します。地味かもしれませんが、専門職であり最後の砦として違和感を突き詰める毎日です。
クオンツ部隊はトレーダーの力を借りて主に日本企業や日本円の市場に触れていますが、世界のマーケットからみた日本の存在感を高めたいと考えています。現在は数人のチーム単位でプロジェクトを担当しており、所属する十数人の課で女性は1人です。理系を選ぶ女性が増え、さらに多様性のある開かれた業界になればと願っています。
中学校・高校では弦楽アンサンブル部でチェロを担当し、社会人になってから楽器を買って再開しました。週末に趣味で弾いて、スクールの発表会に出たりしています。いつかオーケストラに参加して演奏できたらいいなと想像しています。(文=地主豊、写真=森住貴弘)
◇三菱UFJモルガン・スタンレー証券 市場企画部市場エンジニアリング室 クオンツサイエンス課 梶本詩織(かじもと・しおり)さん
(2024/2/26 05:00)