NOK、自動車の変化に対応 新技術でアピール【PR】

(2024/5/15 10:00)

 創業90周年にあたる2031年度に連結売上高で1兆円を目指すNOK。自動車業界は100年に一度の大変革期のまっただ中にあり、同業界に製品供給する同社も変革を迫られている。こうした中、同社は、5月22日からパシフィコ横浜(横浜市西区)で開かれた自動車技術関連の展示会「人とくるまのテクノロジー展2024」で、電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)といった社会課題解決に寄与する製品・技術を提案。4月に国内外のグループ会社92社統一のコーポレートアイデンティティー(CI)を発表した同社。グループで培ったノウハウや技術を結集した目玉展示を紹介する。

自己潤滑ゴム、EV電費性能向上に貢献

  • 自己潤滑ゴム

 電気自動車(EV)市場拡大への対応や新分野開拓を狙い、NOKが新たに提案するのは「自己潤滑ゴム」だ。EV駆動装置「eアクスル」のモーター駆動部に用いると、トルクを同社従来品比で最大4割抑制できる。オイルやグリースなどが機械の中で回転や往復動する軸のすきまから漏れるのを防ぐ「オイルシール」国内シェアトップのNOKと、石油元売り大手のENEOSとの共同開発品。今後需要拡大が見込まれるロボットや水素分野への用途展開も見据え、満を持して投入する期待のゴム材料という。

 NOKは従来、内燃機関車向けにエンジン内部のクランクシャフト回転時に金属同士の摩擦を減らす潤滑油を封止するオイルシールを供給してきた。業界では、潤滑油の撹拌抵抗によるエネルギーロスを低減して燃費を上げる潮流にあり、潤滑油の粘度を下げてできるだけ“サラサラ”の油にする傾向にある。EVのeアクスル摺動部であるモーターに使われる潤滑油も同様に、粘度を下げて電費を上げるニーズがある。

 内燃機関車のエンジンは、一方向の回転が基本で、かつ回転し続けるためシールと金属シャフトの間に油膜ができやすい。しかしEVの場合は、信号などで車両停止するとモーターが止まり、その間は油膜を形成しにくく、走行すると油膜が形成できる。この走行と停止を繰り返すことはオイルシールにとっては過酷な環境である。

 加えて、サラサラの潤滑油になると、界面から逃げやすく、シールとシャフトの直接接触が増え、シールが摩耗しやすくなるという課題があった。

  • NOK R&D技術研究部材料研究課 安斎貴寛 専門主事補(左)/NOK R&D技術研究部材料研究課 青柳裕一 課長(右)

 そこで10年来の協力先でもあり、オイルのプロであるENEOSと、シールのプロであるNOKがタッグを組み、この課題を解決。「技術やアイデアを相互に出し合い、一緒に作った」(NOK R&D技術研究部材料研究課の安斎貴寛専門主事補)という自己潤滑ゴムは、表面改質やコーティング技術といった従来の発想とは異なり、ゴムの配合を工夫し、分子レベルで界面を制御することで、ゴムと金属の間に油膜を留まらせやすくすることに成功した。

 同技術によりオイルシールの摩耗が減り、長寿命化を見込む。NOKは自己潤滑ゴムをEVのみならず、自動車エンジンより低速かつ回転の切り返しが頻繁に起こるロボットなどへの採用も期待する。NOK R&D技術研究部材料研究課の青柳裕一課長は「この技術が世界に広まり、貢献できればうれしい。そのためには広く知ってもらうことが第一歩」と出展に期待する。成長分野と位置づける水素など新領域も開拓したい考えだ。

圧力開放弁でEV電池の熱暴走防ぐ

  • 圧力開放弁 小・中流量タイプ

 現在は世界でEV需要が鈍化しているが、中長期では伸びるとみて、NOKは同市場向け製品を強化する。その一つとして、EV車載電池の熱暴走による火災や爆発事故を防ぐため、電池パック側面に装着してパック内に蓄圧したガスを逃がす開発中の圧力開放弁のシリーズを出展する。

 圧力開放弁は通常時は水やダストの侵入を防ぐ。内圧異常時にガスを逃がす開口面積と通気流量は連動するため、流量(=製品サイズ)別の3種類を提案する。1分間に4000-6000リットルのガスを逃がす大流量タイプ、同2000-4000リットルの中流量タイプ、同200リットル以下の小流量タイプを揃えた。搭載箇所・スペースや必要な通気性能など電池メーカーの要求に応じて選べる特徴を訴求する。

  • 圧力開放弁 大流量タイプ

 大流量タイプは、シールリップを一体成型したプレートとカバー、バネの組み立て製品。プレートにシールリップを直接焼き付けており、一般的なゴム、樹脂、金属など単体素材を組み立てる製品に比べ信頼性が高い。また、バネは板バネを採用。コイルバネを用いる同様の製品に比べ20ミリメートル程度低ハイト化できる。同製品は一般財団法人日本品質保証機構の高圧蒸気洗浄噴射試験におけるIP保護等級「IPX9K」を満たす。

 これらの特徴はNOKのゴム設計技術と協力メーカーの加工技術により実現した。開発を担当したガスケット・ブーツ事業部設計部製品開発課の萩原直樹氏は「EV市場が拡大し、そこに安全性を左右する同製品が採用され、貢献できれば嬉しい」と思いを語る。

  • ガスケット・ブーツ事業部設計部製品開発課 萩原直樹 氏(左)/ 精密・Oリング事業部開発企画部開発企画二課 永嶋二朗 氏(右)

 小流量タイプはゴム製で傘の形状をしたバルブ、中流量タイプはゴム製の傘バルブをピンやボルトで係止するなどシンプルな構造。径、ゴム材の厚み、硬度、締め代で開弁圧や流量を調節する。コンパクトで部品点数が少ないためコストを抑えられる点が特徴だ。封止したい対象物に応じて最適なゴム材料の選定が可能で、難燃性のグレード「UL94-V0」相当の材料も揃える。

 圧力開放弁の耐熱・耐久・耐振動評価に加え、実使用条件を模擬した流量試験実施がNOK内で可能な点も同社の強み。小・中・大流量タイプのいずれも顧客から引き合いがあり、今後の展開に期待がかかる。

 精密・Oリング事業部開発企画部開発企画二課の永嶋二朗氏は「今後も顧客の困りごとに寄り添った開発をしていきたい」と意気込む。

差圧15kPa(外部大気圧に対する内部圧力)時における1分間あたりの流量。

<人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA>

・主催:公益社団法人自動車技術会

・会期:2024年5月22日(水)~24日(金)

・会場:パシフィコ横浜 展示ホール・ノース

・URL:

(2024/5/15 10:00)

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