| デジタルものづくりセミナー2010in信州 ダイジェスト |
午前の部: 経営者・推進者を対象としたデジタルものづくり経営講演
テーマ「3次元デジタルものづくりによる経営革新」 |
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【主催者挨拶】
ARECセンター長 信州大学 名誉教授、信州短期大学 学長 白井汪芳氏
技術者の抱える課題を解決するデジタルエンジニアリング
日本の製造業は、新興国の台頭などによる厳しい市場競争のなかで勝ち残りを目指し、徹底したコスト削減に取り組んでいます。製品設計に携わる技術者は、多様化する顧客のニーズに耳を傾けながら、品質の向上、製品を市場に出す時間短縮、コスト削減、など多くの課題を克服しなければなりません。このような課題を解決するうえで、最近とくに注目されているのが、3次元データを中核とするデジタルエンジニアリングです。
本セミナーは、デジタルものづくりの最先端の動向について、3次元CADを活用した製品設計の事例やポイント、経営革新につながった事例を中心に、現場の最前線に活躍されている方々にご講演いただきます。明日からの企業活動に活用され業績の一層の向上につながることを願ってやみません。
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【来賓ご挨拶】
経済産業省関東経済産業局 地域経済部次長 太細敏夫氏
2次産業から、3次元を活用する2.5次産業への発展を
今年中にはGDPが中国に抜かれるのが確実な現在、世界における日本の位置づけがかなり落ちています。
スイスの研究所による国際競争力の調査結果によれば、1990年ごろの日本は1位や2位でしたが、今年は27位になり、随分抜かれたと実感せざるを得ません。リーマン・ショック以後、自動車の売上がドンと落ちて経済全体が麻痺。自動車・電機に依存する輸出産業の「一本足構造」を何とか変えていかなければなりません。そのため、経済産業省は6月に発表した「産業構造ビジョン」で、環境・エネルギー、インフラ関連産業、介護・健康福祉、文化産業立国、ロボットなどの先端産業の5分野を重点産業として提案しています。
その一方で、日本経済の基盤をつくってきた自動車産業を中心とする製造業は、新興国の追い上げのなかでかなり厳しい状況にあります。製造業は従来の2次産業ではなく、3次元を活用した2.5次産業として発展していかないと、これまで得意としてきた高度部材・高付加価値製品を守っていけず、供給基地としての地位も維持できません。
そうしたこともあり、デジタルものづくりの取り組みを加速し、最先端の技術を一層、維持・発展していただくことを期待しています。
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株式会社IHIシバウラにおけるデジタルものづくりを利用した経営革新事例のご紹介
講師:
株式会社IHIシバウラ 理事 技術開発センター センター長
高橋浩 氏
◆徹底したIT化で設計開発を改革
農業機械、エンジン関連、環境・電子制御装置などを開発・生産するIHIシバウラは2003年、デジタルものづくりによる設計開発の改革に着手した。改革の背景にあったものは、希薄になった技術者相互の連携協力、クレーム処理などで手戻りが発生し技術開発に手が回らない設計者負担の軽減、など5つの革新。目指したことは、フロントローディングとコンカレント・エンジニアリングの実行、開発に関する情報の蓄積・一元化・見える化の実現、などであった。
フロントローディングとコンカレント・エンジニアリングについて、技術開発センター長の高橋浩氏は「フロントローディングで早期に検討を実施し、設計の上流で完成度を高めないと、コンカレント・エンジニアリングは見切り発車になり失敗します」と強調した。
ここで重要になるのが工程間の情報共有で、大切な役割を果たすのが3次元CADである。SolidWorksを導入し、設計ミスの削減や3次元データの型製作への有効活用などを実現した。
フロントローディングの要となる設計段階の検討も、設計者向けCAEとしてDesignSpaceを導入。それまで専用モデルを作成し社内の専門家が行っていた解析が、3次元データを流用すれば設計者でもできるようになり、解析の利用度が飛躍的に向上した。トラクタの強度解析や消防ポンプに内圧を加えた際の構造解析などに応用され、開発にかかる工数や期間が従来の約3分の1に短縮された例もあると報告された。
さらに高橋氏は、PDMも導入し、ナレッジの蓄積や文書の作成・配布コストの削減などで成果をあげたことも付け加えた。
◆デジタルものづくりで「考える設計」を実現
デジタルものづくりを推進したことで、同社は新製品の素早い投入と品質の確保を両立や、技術者の連携体制の確立、などの成果をあげた。また、付帯価値として、製品開発力向上、異業種技術の融合、コミュニケーション表現活用を言及した。しかし高橋氏は、最大の成果に「考える設計の実現」をあげる。集めたデータの有効利用を考える時間が増えたというのだ。
「日本の製造業は、最先端にいなければならないと思っています。デジタルものづくりによって、私たちも日本の製造業として存続する希望が持てるようになりました」と語る高橋氏。今後の課題として、3次元データを製造部門でも本格的に活用すること、などをあげ、「IT化をさらに推進し“強い経営”を実現したい」と力強く締めくくった。 |
進化するものづくり事例
―高度化社会の工作機械が可能にする、高度な工作・新しいビジネス!―
講師:
株式会社入曽精密 代表取締役
斉藤清和 氏
◆高度な工作がもたらしたデザイナーや異業種との出会いと新ビジネスの数々
精密切削加工を得意とする入曽精密。これまで同社は、加工プロセスに切削加工のノウハウを入れてデジタルでつくり込み、ネットワークでつないだマシニングセンタで出力(=切削加工)する「MC造形システム」で、アルミのバラや世界最小のサイコロ、奈良・新薬師寺の国宝「伐折羅(バサラ)大将像」を制作し、技術の高度化に努めたことで、国内トップ級のデジタル匠の中小企業として、各種表彰を受賞している。。
これらの評判から、最近では、「機動戦士ガンダム」のデザインで知られる大河原邦男氏が制作した作品をスキャナで読み込んでつくったフィギュアの発売や、ハーレー・ダビッドソン用のエアクリーナの開発、原型に忠実なルアーの量産技術の開発、といったそれまで接点がなかったデザイナーや異業種との出会いから新たなビジネスが芽生えた。昨年のリーマンショックで自動車関連からの仕事が激減した時に、社員のアイデアを具現化し、ヒット商品を次々に生み出している。
◆工作機械の新たな活用領域を開拓し、感性を表現したものづくりを指向
さらに同社は、MC造形システムで3次元スキャナなどを活用したリバース・エンジニアリングを実行している。代表取締役の齋藤清和氏は「工作機械は図面データを入力すればコピー機と同じです。現在のように変化が求められる時代に工作を見直し、3次元スキャナやCGソフトを使えば、ネットワーク時代の新しいビジネスの芽が生まれます」と言う。
バサラ大将像の制作も、3次元スキャナで実物のSTLデータを作成し、そのデータをCAMに適したサーフェスデータに変換して切削加工した。その印象は本物に近いだけなく、世界最小0.3mm角のサイコロをつくったような微細切削加工技術で造形に深みを与えている。
同じようなことがルアーにも言える。プロが「魚が釣れる」とお墨付きを与えたルアーの原型のSTLデータを基に、従来製法より変形率を10分の1に抑えた新製法を確立した。
「自社の技術と外の世界の融合を図っても成功する確証はありませんが、挑戦を恐れずにやらないと何も生まれないと思っています」と齋藤氏はエールを送る。
CAD/CAMの活用で実現する高度な工作の、さらに上のレベル目指すために、3次元スキャナなどを積極的に活用している同社は、工作機械の新たな活用領域を開拓し、図面には表れない感性を表現したものづくりを海外と共同研究で指向し始めた。中小企業がビジネスチャンスを掴むためには、自社技術を見極め、外の世界へ一歩踏み出すこと、そして外との技術や人材交流が革新的技術や製品開発の発想の変革を誕みだしてくれる。その「人の利、地の利、時の利」の変化を感じ、「情報」から次の一手を創造することがデジタルもにづくりの醍醐味であり、付加価値であるという。今後は医療分野や芸術分野での活用も模索し、「ネットワーク社会の現在、世界に向けて売っていきたい」と今後の抱負を語った。
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午後の部: 推進者を対象としたデジタルものづくり最新動向講演
テーマ「進化するデジタルものづくりがもたらす設計力と現場力の融合」 |
JAMA/JAPIAの3D図面標準化活動総括と実施事例
講師:
株式会社本田技術研究所 CIS3ブロック 主任研究員
永井昭良 氏
◆業務効率の向上と品質の向上を可能にする3D単独図
日本自動車工業会(JAMA)は現在、3次元主体のソリューションの標準化に取り組んでいる。なかでもJAMAが着目しているのは、3D単独図の標準化だ。
3D単独図は3D図に設計・生産・製造に関するすべての情報を集約し3次元化したもの。注記が形状と連動しており、解読・加工を自動化することによって作業標準などが簡単にできる。工程シミュレーションの実施や実車に近い形での検証も可能になり、業務効率と品質の向上が期待される。
本田技術研究所の永井昭良氏は、「情報は3次元になってきましたが、流通させる媒体は紙の図面(2D図)を使っているため、設計と現場との連携では、かなり効率が落ちています。こうした理由から3D単独図の標準化に着目しました」と説明する。
◆作図工数を半減するも、改善の必要性はまだある
3D単独図標準化のロードマップは、基盤の標準化(フェーズ1)から始め、規定の制定、CADやビューワの機能要求と実装検証を実行。主要自動車メーカーがある国の業界団体が参加する会議体“SASIG”をベースに、関係するメーカーやサプライヤーが集まりながら、CADベンダーとビューワベンダーとの連携を図ってきた。
CAD、ビューワともに、ベンダーに対し標準機能と効率向上機能を明確に示し、実装状況を評価。「CADはまだ機能の充実が必要ですが、ビューワについてはユーザーの使い方次第という状況まできました」と、永井氏は現状を説明する。
しかしそれでも、本田では設計者の作図工数が、3D図と2D図の併用に比べて50%削減、という成果をあげたという。
「われわれの活動で、自動車開発システムの基盤が構築できたと考えています。まだツールには改善が必要ですが、ベンダーとの連携を図りながら、フェーズ2で開発を進めていく計画です。そして普及のためには、従来から3D図を活用してきた金型メーカーや治具メーカー以外にもメリットを感じてもらえることが不可欠」,永井氏は現状をこう総括した。
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3次元設計再考:デジタルものづくり新潮流が3次元化を加速する5つの理由
講師:
ソリッドワークス・ジャパン株式会社 マーケティング部 担当部長
金谷道雄 氏
◆3次元 CADで開発環境を整える
開発を前倒しするフロントローディングを推進するうえでデジタルものづくりは不可欠だが、マーケティング部の金谷道雄氏は、デジタルものづくりには新たな潮流が5つあると明言する。
第1は、「設計の醍醐味を増す操作感」。フィーチャーを意識しなくても簡単に設計の変更や追加、ダイレクトなモデリングができるようになった。エラーの発生原因や解決方法をある程度示してくれるようにもなり、インテリジェント化が進んでいる。
第2は、「設計要件:設計力向上のための設計検証/環境設計の推進」。SolidWorksをはじめ多くの3次元CADでは、線形静解析や機構解析など設計者が最低限実施すべき検証がCADと一体型でできるようになり、設計者は設計要件を検証しながらモデリングを進めることができる。
第3は、「生産要件:手戻り、歩留まり等の予測と設計者負荷削減の施策」。通常は設計要件を検証した後は図面作成で、現場とのコミュニケーションをとるのが現在のプロセスだ。しかし、そこには、図面の公差が影響するばらつきや歩留まり、また加工での問題等から手戻りなどが発生してしまう。このような生産要件を設計で検証することができれば、少なからず、現場とのコミュニケーションや手戻りがもたらす緊急対応での設計者負荷を削減できる。SolidWorksでは、3D単独図の活用として、公差解析、加工性検証へ応用し、モデリングや公差定義での問題を事前に指摘してから、最終的な3D単独図や2D図を作成することができるため、大幅な手戻りの防止できる。金谷氏は、「現場サイドで起こりそうな問題、設計者のモデリングミスで起こりそうな問題は事前に確認する必要がある」と強調する。
第4は、「仮想試作:エレメカ・制御連携がもたらすプロセス革新」。制御ソフトの検証やエレメカ制御一体の試作がCAD上でできるツールがパートナーから提供されるきた。これにより、今までは実機でしか制御試験ができなく、短期間で検査をしていたために品質問題の多くが制御プログラムにあったと報告されている。最先端技術では、仮想試作で、
3次元CADとECAD、制御の三位一体の検証を可能とし、大幅なコスト削減や品質安定化を実現できるようになってきている。
そして第5は、「デジタルものづくり・コミュニケーションの進化と将来」。3D単独図が読み込めるビューワやレンダリングツール、さらには卓上サイズの3DスキャナやRP(ラピッド・プロトタイピング)フルカラーRPなど、手軽にスキャンして3次元CADで編集をしてフルカラーRPで処理する一連のプロセスが確立されてきており、プロダクトデザイナーやコンシューマ開発などで効率的なコミュニケーションができるようになった。
金谷氏は、「日本の製造業が生き残る道に、ハイテクへの感性の織り込みがあります。スピード、コスト、品質に加えて、安全・安心、環境・調和、感性・共創を配慮した消費者視点でのグローバルものづくりを3次元CADを使って開発環境を整えることがポイントです」と訴えた。
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品質確保のための3次元公差・信頼性検証
講師:
株式会社プラーナー 代表取締役
栗山弘 氏
◆公差設計と幾何公差で世界に通用するグローバル設計を
製品の機能を満たすべく部品の公差を一つずつ決めていく公差設計。代表取締役の栗山弘氏は「公差設計のPDCA」を提唱している。公差を計算して設定し(P:計画)、正しく表現して伝達する(D:実行)。そして実行した結果をチェックし(C:点検)、結果に基づいて見直す(A:処置)というものだ。「つねにチェックをした段階で、『ああ、よかったな』で終わり、次はもっと限界に挑戦するPDCAサイクルを回したい」と、栗山氏は公差設計への熱い思いを語る。
しかし、公差設計はなかなか実施されていないのが現実だ。プラーナーの公差設計セミナーに参加した約1500名にアンケート調査した結果、約8割が「公差設計をやっていない」と回答。幾何公差についても同様の結果で、工程能力指数のCpとCpkも9割が「知らない」と回答している。栗山氏は「公差は品質とコストを決めるもの。公差設計を実施して適正な公差値を決め、その上で正しい幾何公差を用いて表記することは設計者の当然の業務です」と強く訴える。
設計者自らが扱うようになったCADやCAEと異なり、公差解析は専任者すらほとんどいない状況だが、その一方で、幾何公差がないと成立しない3D単独図の活用が推進されている。公差設計・解析を設計者が確実に実行することがますます要求されるようになった状況のなか、“TolAnalyst”や“DimXpert”のような3次元CADに搭載される公差解析ソフトや幾何公差表記ソフトが登場し、環境が徐々に整いつつある。「公差設計と幾何公差にフォーカスして、世界に通用するグローバル設計をしましょう。確固たる設計力を持ち夢のある商品を次々と開発できる設計者が増える体制を、われわれが構築していければと思っています」と、栗山氏は今後の決意を示し、参加者にエールを送った。
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エレメカ制御開発を実機レスで実現する仮想メカトロニクス・シミュレータ
講師:
株式会社インターデザイン・テクノロジー バーチャルメカトロニクス事業部 事業部長
本橋聖一 氏
◆実機に依存したソフト開発からの脱却を実現する“Vmech”
インターデザイン・テクノロジーが開発した“Vmech”を利用すると、ソフト開発で3Dデータを有効活用することができる。
Vmechは3D CADの形状データを使って仮想のメカをつくり、実機を使わずに制御ソフトを試験・検証するシミュレータ。実機試験を短縮するだけでなく、故障などの各種条件を設定した検証もできるため品質向上も期待できる。バーチャルメカトロニクス事業部の本橋聖一事業部長は、「ソフト開発でのシミュレーション技術やシミュレータの活用が、ようやく認知されてきました」と説明する。
本橋氏からは、Vmechの活用したアスリートFAと東芝の2社の事例も紹介された。
アスリートFAはメカ制御のコンカレント・エンジニアリングの実現、実機レスによる基本デバッグ開発効率の向上、などを目的にVmechを導入。40かかるデバッグ作業のうち75%が実機レスでできるようになるなどの効果を出した。東芝は特殊な生産設備を開発する生産技術センターで導入。実機レスでのデバッグ率は導入当初は20〜80%と大きなバラツキが見られたが、現在は平均して70%は実機レスでデバッグできるようになった。
「ものづくりの環境が変わっていくなかで、メカやソフトの開発拠点は国外を含めて分散化していきます。組み込みのソフト開発ではデジタルツールを活用した開発は遅れていますが、実機に依存せず3次元データを使ったシミュレーションによるソフト開発、という新たな手法を考慮いただければと思います」と投げかける本橋氏。開発の効率化が確実に図れるこの新手法は、デジタルものづくりの可能性をさらに広げるインパクトをもたらした。
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中小企業が挑む自社製品開発秘話
講師:
有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所
代表取締役
飯田吉秋 氏
◆デザインはビジネス。儲けなければ何にもならない
アイ・シー・アイデザイン研究所は、商品企画から製品デザイン、設計、製造支援、CADデータ作成など、ものづくり企業を広範にわたって支援するデザイン事務所だが、その一方で自社商品の開発・販売も手掛けている。自社商品とは、倒しても振ってもこぼれないシリコンキャップ「Kissシリーズ」や、ひっくり返すと形が変わるシリコーン知育玩具「nocilis(英語名を逆から読むとシリコンとなり、機能を商品名で表現したもの)」だ。
自社商品の開発・販売は、「デザインしても売れなければ何にもならない」や「デザインした通りにものができない」というデザイナーの意見を覆すために取り組んだことだった。「問題なのは、デザイナーにはまだ見える化、ものをきちんと見せるという行為が足りないこと。だから常々、『デザイナーは3次元CADを使わなければならない』と言ってきました」とは代表取締役の飯田吉秋氏。その上で、「デザインはビジネス。儲けなければ何にもならない」と強調した。
◆5つのミカタから問題点を探し、「なぜ、いままで開発されなかったのか」を考える
飯田氏は売れる商品を開発する要諦として、「人間が日常生活を営むうえで満ち足りない状況を、『見』『観』『視』『看』『診』という5つのミカタから情報として捉え、そこから問題点を探す。ものづくりは、この5つのミカタのなかで情報を持っていないといけない。そして、『なぜ、いままで開発されなかったのか』を考えることが大事だ」と主張する。Kissシリーズやnocilisの開発の原点は日常生活での問題点解消にあった。kissシリーズは、脳梗塞のリハビリに励む飯田氏の父親に手の不自由さを気にせず飲み物を飲んでほしいと願ったこと、nocilisは、飯田氏が孫のために隣家に迷惑をかけず静かに遊べる玩具をつくりたい、と思ったことから始まった。
5つのミカタから問題点を捉え、独創的な商品を開発する。ただ、売れる商品にするには、広報や販促、流通、価格設定、といった売れる仕組みのデザインが欠かせない。
そして、デザイナーの創造性を助けるものとして3次元CADがある。飯田氏は長年にわたり3次元CADを活用してきたが、「デザイナーのためにつくられていない」と評価。SolidWorksは唯一といってもよいほど、デザイナーの想いを自由自在に表現できるサーフェースや曲面モデリングをパラメトリックフィーチャと押さえるべき平面さえきちんと定義できれば、非常に少ないフィーチャデモデザイン的には優れたものを構築できる点はすばらしい。現在はSolidWorksを駆使して数々の消費者志向のものづくりを実践され、多くの世界的なデザイン賞や特許を取得している。今後デザイナーもデザインと工学の融合や3次元データの設計者との効率的な活用を考慮していくと、設計者以上に、シミュレーションを繰り返してデザイン品質の向上を追求すべきであると提案した。
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サーボモータ設計における公差事前検証の取り組みと公差解析ツールの適用事例
講師:
山洋電気株式会社 サーボシステム事業部設計1部 主査
竹田亨 氏
◆真のフロントローディングを実現する公差設計
サーボモータ、ステッピングモータ、サーボドライバ・コントローラ、冷却ファン、無停電電源装置、太陽光発電システム用パワーコンディショナを開発・製造・販売する山洋電気では、サーボモータの設計に公差解析ツールを適用し、公差の事前検証に取り組んでいる。
同社では開発設計段階からコストと品質を作り込むフロントローディング型の開発体制の構築を進めており、サーボシステム事業部設計1部の竹田亨氏は、「公差設計こそ真のフロントローディング」と強調する。初期設計の段階で公差設計をしっかり行うことで、製品品質の確保とコストダウンを高いレベルで達成することが可能になる。逆に公差設計を行わない場合、製品に求められる性能を満足できないばかりでなく、不具合の種が見過ごされる可能性がある。
◆公差は競争力・ブランド力の源泉と確信
しかし、公差設計には難所がある。それは、手間がかかる、公差計算書と図面がリンクせずナレッジとして残すのが難しい、PDCAサイクルが回らない、というものだ。こうした難所を同社は、IT化することで克服した。公差解析ツールを活用し、3次元CAD上で公差設計・解析を行うようにしたのである。
ただし、公差設計に関する理論もおろそかにはしていない。たとえば、出力軸(シャフト)と取り付け基準部の同軸度を求める公差解析では、傾きとガタを理論的に考慮する必要があり、公差解析ツールが出力する結果をそのまま鵜呑みにすると誤差が大きくなってしまう。同社は、公差設計に関するすべての理論を理解・実践した上で、IT化するというステップを踏んだ。
公差解析ツールを使いこなせるようになるまでの苦労は大きかったが、ツールを使うことにより解析は楽になり、その結果を資産として蓄積することも可能になった。現在は公差解析の文化を社内に根付かせ、PDCAサイクルを確実に回すしくみづくりに取り組んでいる。
さらに、単に公差解析を行うだけでなく、モータ駆動時の発熱による変形量をシミュレーションで求め、その形状で公差解析を行うといったITツールの連携に挑戦し、より高い信頼性と品質の作り込みにチャレンジしている。
「公差は会社の戦略であり、競争力・ブランド力の源泉だと確信しました。公差設計を身につけるには具体例で実践あるのみ。泥臭い具体論を展開しながらPDCAサイクルを回し、設計者の熱き想いのこもった魅力ある製品を開発したい」と竹田氏は力強く語った。
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