[ オピニオン ]
(2016/12/15 05:00)
今年の漢字は「金」、流行語大賞は「神ってる」が選ばれた。海外にも今年を象徴する言葉がある。「post truth」(ポスト・トゥルース)だ。世界最大の英オックスフォード英語辞典が選んだ。
ポストは郵便箱や柱の他に「重要なポストに就く」とか「ポスト安倍の最有力候補は誰か」などと使われる。だが、ポスト・トゥルースの場合は「大切ではない」。つまり「世論形成において客観的事実が感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない」という意味になる。
英国の欧州連合離脱や米大統領選の報道・論評で「ポスト・トゥルースの政治」などと多用され、使用頻度は昨年の20倍以上だとか。既得権者が示す事実への不信感の高まりが背景にあるようだ。
14日発表の日銀の企業短期経済観測調査で、代表的指標とされる大企業製造業の業況判断が1年半ぶりに改善した。新しい年に向け、景気回復が期待できる吉兆と受け止めたい。
「景気は気から」ともいわれる。だが企業の業況判断が売上高や経常利益などの事実に裏打ちされたものでなく、トランプ相場のような期待感に基づくものであっては問題だ。日銀短観は経済指標の中でもポスト(柱)となる重要性を持つからだ。
(2016/12/15 05:00)