[ オピニオン ]
(2016/12/26 05:00)
安倍晋三首相が第2次内閣で政権に返り咲いてから満4年。安定政権は産業界にとって大きなメリットだが、成長戦略への取り組みは十分ではない。
安倍政権は、直前の民主党政権による失政と混迷への批判から誕生した。もともと産業界の支持は高かったが、年を追うごとにその支持基盤が強固になっていると感じる。
当初、安全保障政策に関する首相のタカ派的姿勢に対しては産業界の中にも不安視する向きがあった。しかし首相の慎重姿勢が一貫していることから、こうした懸念は後退した。
一方、安倍政権の経済運営に対しては、好評価ばかりではない。経済政策「アベノミクス」は当初、誰もが予想できなかったほどの効果を上げ、株高と円安をもたらした。金融政策と財政出動で緊急避難をしている間に成長戦略を軌道に乗せるはずだったが、その後の展開は力強さを欠いている。
首相が最初に約束したのは岩盤規制の打破だったが、今は働き方改革に軸足を移している。経済指標は一進一退で、デフレも脱却できない。実体経済を支えているのは相変わらず補正予算と日銀の追加緩和だ。しかもこの間、首相は2度にわたり消費増税を先送りし、国民に“痛み”を求めることを避けた。
産業界トップの中には「困難な状況の中で、首相は実に良くやっている」と政権をかばう声もあるが、不満はくすぶり続けている。中小企業も、まだ好況を実感できていない。
今春以降、景気が足踏み状態のまま為替が円高に転じ、産業界には先行き不安が高まった。最近の“トランプ相場”でひと息ついているものの、いずれこれが剥落すれば産業界から政権批判が漏れ出すだろう。
首相の在任日数は第1次政権と通算で1828日となり、政権5年目の来夏には史上第5位の小泉純一郎氏の1980日を抜く見込みだ。ただ産業界は単に長期政権を求めるのではなく、その実行力に期待する。成長戦略の進展なしに日本再興はなし得ず、産業界の支持も決して続かない。
(2016/12/26 05:00)
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