[ オピニオン ]
(2017/1/13 05:00)
人工知能(AI)に人間の仕事が奪われるという懸念を聞くたび思い出す。1991年に亡くなったオムロン創業者、立石一真さんの「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という言葉だ。
一真さんは科学・技術と社会の関係を考察し、70年に独自の未来予測理論を発表。社会は機械化→自動化→情報化と変遷し、2005年から20年間は工業化で生じた問題を克服し、人間らしく生きられる「最適化社会」になると見通した。
現実に21世紀に入って、持続可能な社会を目指すとともに精神的豊かさを求める傾向が強まっている。おおむね、この予測の道筋をたどってきたと言ってよいだろう。
昨年、国際社会は最適化どころか分断と対立が進んだ。AIと仕事を巡る議論の根底には、仕事を奪われかねない人と、創造的な活動を楽しめる人の両極に社会が引き裂かれるという不安があるように思う。
AIがどんな仕事を奪うのかという議論ではなく、可能な限りAIを活用することで、人間が創造的な活動に少しでも多くの時間を割ける社会を夢みたい。人と人の間の溝を放置せずに埋める努力こそ、一真さんが思い描いた「人間らしい営み」ではないか。
(2017/1/13 05:00)