[ オピニオン ]

社説/東芝の経営危機

(2017/1/30 05:00)

東芝の強さは総合力である。その強さを生かした再建の道を探れないか。

東芝の置かれた状況は、非常に厳しい。不適切会計が招いた2015年の経営危機後、同社が成長分野と位置づけたのが原子力事業とフラッシュメモリー事業だった。その原子力事業で数千億円規模の損失が見込まれ、赤字解消のためにメモリー事業の一部売却を前提に分社化することを決めた。

わずか1年前に立案した戦略が機能しなくなっている。原子力事業の損失については不透明な部分があるものの、1年前にリスクを把握できていなかったことは企業統治上の問題と言わざるを得ない。

16年3月には医療機器事業と白物家電事業を売却し、保有資産も相当に圧縮した。新たに数千億円規模の損失を乗り切るのは容易なことではない。

自動車や鉄鋼のメーカーは、大きなひとつの事業を中核に据えている。これに対して電機メーカーは、大小さまざまな事業の集合体である。しかし客先もノウハウも異なる各種の事業が、いくつかの技術基盤を共有している点に特徴がある。

“総合電機”という業態が批判されるようになって久しい。それは事業が互いにもたれあい、安定収益に甘んじていることへの批判だった。しかし電機メーカーがイノベーションに取り組むためには、社会インフラ領域であれ、高度情報機器領域であれ、優れた総合力が必要となる。

もし事業の切り売りを繰り返していけば、数兆円規模の巨大電機メーカーでも、わずかな期間で溶けるように消滅してしまう。そうした前例は日本にも、欧米にもある。

むろん東芝の現在の苦境は他者が責任を負うものではなく、自社が主体となって乗り越えてもらわなければならない。思い切った決断も必要だ。

しかし東芝の持つ総合力、優れた技術者と蓄積したノウハウは、日本の産業技術にとって貴重な存在である。経営陣にとっては、今が正念場だ。国や金融界にも理解を求めたい。

(2017/1/30 05:00)

関連リンク

総合3のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン