[ オピニオン ]
(2017/3/16 05:00)
学生が定期考査の答案に記入するのは名前くらいだが、国家試験などの受験票には生年月日や性別、住所を記入する。新年度には、こうした個人情報を書く機会が多くなる。
生年月日、性別、郵便番号の三つの情報がそろえば、名前が分からなくても米人口の87%を特定できる―。米国のある調査の結果は、個人情報保護の難しさを示す。実際に米国ではこれらの情報を含む医療データの公開を中止した。
日本では個人情報保護法の改正を受けて、5月から個人を特定できないよう「匿名化」すれば本人の同意を得ずに情報を扱えるようになる。ビッグデータ利用に期待が高まる。
医療機関が蓄えた患者データを新薬の開発や治療効果の分析に生かす。顧客行動データをマーケティングへ展開する。こうした情報が、すべて匿名に加工しないと使えないのでは手間がかかりすぎる。国立情報学研究所の作業部会は2月、利用の目的やその後の流通の態様に応じた安全性で足りると意見した。
利便性を語るのはたやすいが、公開情報から個人が特定されないことを証明するのは難しい。住所・氏名を記入しても不安のない社会のためには、情報を利用する側が目的と管理方法をきちんとすることが必要だ。
(2017/3/16 05:00)