[ トピックス ]

【知財特集】製造業における知財戦略の事例

(2017/4/25 05:00)

業界展望台

 日本経済の活性化と国際競争力の強化を目的に、国を挙げて知的財産(知財)戦略への取り組みが進められている。企業においても、競争力向上に直結する知財戦略が重要視されてきている。特許の取得、営業秘密として秘匿する知財の保護、市場での優位性を確保するための知財経営など、置かれている経営環境やビジネスモデルによって知財戦略はさまざまに異なる。技術力を競争力にかえる「知財」をどう活用しているのか、製造業2社の知財戦略を見た。

独自データベースを活用─レーザーテック

  • 知財担当専任者の小川潔氏。独自の知財情報システムの構築に取り組んでいる

 レーザーテックは半導体、エネルギー・環境、薄型ディスプレー(FDP)の関連装置、レーザー顕微鏡の開発、製造、販売を行う。半導体のマスクブランクス欠陥検査装置は世界シェア100%。ニッチ市場に特化し、高いシェアを狙う「グローバルニッチトップ戦略」を取る。売り上げの10%が研究開発費、社員の60%が技術者という研究開発型の企業である。

 1960年の創業当時から特許重視の経営を行ってきたが、長い間、発明者が個別に特許を出願していた。社内に知財担当者がおらず、知財管理ができていないという問題を解消するため、2000年頃本格的なシステム化に乗り出した。

 そこで当時の社長から知財担当者に任命されたのが、技術企画室知的財産担当スタッフエンジニアの小川潔氏だ。小川氏が最初に取った戦略は、技術者からの発明提案を増やすことだった。技術者が持つアイデアを抽出するため、決まった書式を作り、具体的な内容の発明提案書を提出させた。提出先は小川氏一人に集約されており、「同じ目を通して見ることにより総合的な判断ができる」のだという。小川氏は技術の内容や製品に応じて特許出願かノウハウの選択をする。特許出願にあたっては、自社製品を保護するための出願、他社が実施しそうな周辺技術の出願などと戦略を使い分けている。

  • クリーンルーム内で装置の組み立てや品質検査を行う(レーザーテック提供)

 近年、企業経営は事業戦略、研究開発戦略、知財戦略が一体となった三位一体の戦略の展開がうたわれているが、その三つを握る副社長が小川氏の上司にあたり、密に連携が取れる体制にある。この体制は会社の経営方針、研究開発方針、今後の研究開発の展開の方針に沿って発明を権利化していくために非常に有利だ。おかげで社内で発明提案を受け、会社の方針に沿った発明を選択し、権利化するまでがスムーズに行われている。現在は特許出願が年に20件程度で、その半数以上がビジネスに生かされているという。

 小川氏は03年頃から独自の知財情報システムの構築に取り組んでいる。自社の特許情報と他社の特許情報を一元管理するデータベースだ。現在1万件程度の情報を登録。自社特許については重要な部分のみ抽出し、出願経過などを分かりやすい形で技術者に提供している。他社特許については知財担当者が特許情報を独自の観点から社内用語に変換した要約を作成し、社内で共有している。

 同社は「世の中にないものをつくる」ことをポリシーとしている。小川氏は「経営理念が知財の考え方につながっている」と語る。知財戦略による独自技術の専有化が、高シェアの確保を可能にしている。

日本パテントデータサービスのシステム導入─オージー技研

  • 介護入浴装置は国内トップシェアを持つ

 オージー技研は医療、介護、リハビリ機器の開発製造を行う。1949年に創立、翌年に同社第一号製品の低周波治療器を完成させた。介護入浴装置は国内約40%のトップシェアを占める。創業者が他社から特許権侵害の警告を受けた経験を踏まえ、特許を重視するようになった。年間20件程度の特許出願を行っており、2016年には特許庁による知財功労賞を受賞した。

 主力製品である入浴装置は市場が狭く、競合は2―3社程度。業界は基本的な特許が出尽くしており、製品の主な構成は各社似通っている。そこで、他社にはない機能を持たせることで差別化を図り、特許にしている。

 開発部知的財産課の今吉直紀課長は「製品開発をスムーズに行うための知財戦略を取っている」という。その一つに競合他社の特許を無効にするという方法がある。自社製品を作るための技術が他社の特許である場合、その技術を使えば特許権侵害となってしまう。そのため、該当の技術が他社の特許となる前に、権利化を阻止することが必要となる。手段としては、他社の特許が出願中でまだ権利化されていない期間に、特許庁へ情報提供を行う。特許法では出願の前に公然と知られた発明は「新規性」がないとし、出願を拒絶している。また、特許庁は特許出願されている発明に新規性、進歩性がないということについて情報提供を広く受け付けている。この制度を利用し、特許が無効となるよう特許性を否定するための証拠(公知の発明について書かれた特許文献や刊行物など)を提出し、審査官の審査を手助けするのだ。

  • 知的財産課は4人の体制

 これを成功させるには競合他社の特許情報を常に監視調査(ウオッチング)することが欠かせない。同社は従来、紙の公報を購入し、ウオッチングしていた。それをより効率的に行うため、06年に日本パテントデータサービス(JPDS)の「ニュークライアントサーバーシステム」を導入。今吉課長は「抽出作業の漏れ防止、データ管理による効率化が目的」と話す。同サービスでは日本の特許、意匠、商標、実用新案、審査経過データなどを検索できる。新しい特許公報は随時追加され、自社に関係する特許情報が自動的に送られてくる。同社によると紙で管理していた頃に比べ、他社特許の抽出漏れなどのミス発生を軽減でき、確実に他社特許のウオッチング業務ができるようになったという。

 同社はJPDSから送られてきた特許情報データの中で開発の参考となるものを知財担当者がピックアップし、開発者に配信している。開発者が自分で特許を読めるようになるのが目標だという。今吉課長はいずれ開発者が「他社特許を知って自ら回避し、設計してもらいたい」と語る。

【業界展望台】知財活用特集は、4/28まで連載中です。(全9回)

(2017/4/25 05:00)

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