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【電子版】ロボカップ2017閉幕 来年を目指した戦い始まる

(2017/7/31 05:00)

ロボカップ2017名古屋世界大会の戦いが幕を閉じた。サッカーでは2Dシミュレーション部門で福岡大学と大阪府立大学の合同チームが優勝。生活支援ロボを競う@ホームでは標準機部門で九州工業大学が優勝、2位も玉川大学などの合同チームで日本勢が大活躍した。次回大会はカナダモントリオールで開かれる。今回、振るわなかったチームも躍進したチームも来年を目指して戦略を練り始めている。

■@ホーム

@ホームはロボットが日常生活のお手伝いを担う競技だ。ユーザーから「キッチンのポテトチップスが机に出しっぱなしだから、棚に片付けておいて」と頼まれれば、ロボットは自動で対応しなければならない。まず自分がいる部屋からキッチンへのルートを探し、キッチンに辿り着いたら机を探してその上のポテトチップスを見つける。そしてポテトチップスをつかんで棚を探し、スペースを確認してからポテトチップスを置く。人間なら難なくできてしまう動作もロボットにとっては至難の業だ。部屋、物体、スペース、音声など、たくさんの要素を認識し、計画を立て、アームを動かすなど、一つ一つ解いていく。

  • ロボカップ@ホーム 最終日 審査

日本勢が1位と2位に日本勢が入ったのはDSP部門で準機としてトヨタ自動車の「HSR」が提供される。他にもソフトバンクの「ペッパー」が提供されるSSP部門と、自作のロボットを自由に使えるOP部門と、DSP部門の三つで@ホームは構成されている。DSP部門で優勝した九工大の田向権准教授は表彰式で「感動した。この年になって心が揺さぶられることはそうない。今年の学生はチームワークがよく、本当によくやってくれた」と目を潤ませる。「一人一人の能力が高いことはもちろん、チームが一丸になるには、また別の力が要る。本当によくやってくれた」と繰り返す。

@ホームでは音声や物体認識にディープラーニング(深層学習)が多用されている。どのチームも深層学習を採用し、深層学習だけでは差別化はできなくなっている。九工大はいくつもの深層学習を試し、音声や物体など認識対象にあった深層学習をそれぞれ選んでいる。物体認識はYOLOという高速で認識できる深層学習を採用。HSR搭載の小型GPUに計算させた。チームリーダーを務めた田中悠一朗修士2年生は「みなで調べて、試して、使える深層学習を探した。深層学習はとにかく進化が早い。アンテナを張って手を動かす。これをちゃんとやったことがよかった」と振り返る。九工大は認識や動作など一連の機能をちゃんと実装し、手堅く得点を稼いだ。旧帝大などトップ大学でなくても、しっかりと取り組めば大学院生が独力で深層学習を使い分けられる。他の大学や企業を鼓舞する例になるだろう。

■サッカー

サッカーでは2Dシミュレーション部門の福岡大と大阪府立大の「HELIOS2017」が優勝。ロボカップ国際委員会の野田五十樹会長(産業技術総合研究所総括研究主幹)は「相手チームの動きに応じて戦術を変えるよう進化している」と評価する。小型ヒューマノイド部門では千葉工業大学が3位になった。林立樹学部生は「準決勝では機体の調子が悪かったが、3位決定戦で挽回できた」と振り返る。対戦相手のインドネシアチームの方が足は速かったが、ボールの認識は千葉工大が優位だった。相手がボールを見失っている間に点を入れ、1点を守り切った。

標準機にソフトバンクの「nao」を使う標準機部門では愛知県立大が下位リーグで優勝。小林邦和教授は「8戦やって、最後の決勝戦が最もパフォーマンスがよかった。FWとDFの役割分担とロングキックが機能した」と振り返る。ドイツチーム相手に後半の最初にロングシュートを決め、その1点を守り切った。

  • ロボカップサッカー (標準機)

  • ロボカップサッカー (小型)

小型機部門でも愛知県立大が5位に入った。安達勇介修士2年生は「準優勝のドイツチームに一度負けただけ。組み合わせによってはもっと上に行けた」と悔しがる。愛知県立大は試合中に相手の動きを予測してマークやパスコースカットにいく機能を開発した。試合中に相手の動きを計測し、同じ状況になれば先読みして妨害するはずだ。ただ「予測機能はちゃんと動いたが、パスカットにいくタイミングが早すぎて妨害できなかった」と残念がる。技術としては成功だが、サッカーのプレーとしては失敗だ。技術者がよくはまる落とし穴だ。「うちの強みは研究成果をロボットに実装していけること。良い技術を開発していきたい」と力を込める。

■インダストリアル

インダストリアルではロジスティクス部門は独アーヘン工科大が断トツで優勝した。2位の倍の得点をあげた。この部門では工場の生産機械(FA)の間をロボットが行き来し工程をつないでいく。製品を完成させて最後の配送センターに納められたのはアーヘン工科大だけだった。運営に当たった龍谷大学の植村渉講師は「ドイツ一強。インダストリー4.0の流れを受けてドイツ産業界も支援している」と説明する。「日本ではインダストリーロジスティクスはもっと注目されるべき。まだチーム数が少なく、アーヘン工科大以外は技術が成熟していない。いま参入すればチャンスは大きい」と新規参入を求む。

  • ロボカップインダストリー 優勝した 独アーヘン工科大学

▲インダストリアル ロジスティクス部門 決勝戦

■レスキュー

レスキューでは京都大学が総合4位に入り、小型機クラスと器用さクラスで表彰された。ベスト4のうち3機は重量級で、巨体を生かしてコースを走り回っていた。京大は走行性よりも小型と器用さを重視した。竹森達也修士2年生は「他は重量級のなか違うコンセプトのロボットでもしっかり戦えたことは良かった」と振り返る。障害物の走行中に転倒したがアームを使って起き上がりコースに復帰した。災害現場では人間がロボットを救助できないためロボットが自力で立ち直れる機能は重要だ。

  • ロボカップレスキュー 京都大学 Shinobi 

海外勢も見所の多い大会だった。レスキューで優勝したイランの「YRA」は、「カネがなくても勝てることを証明した」と、運営に当たった長岡技術科学大学の木村哲也准教授は評価する。走破性や器用さ、操作性など総合力で上回った。イランは部品の入手にも苦労する国だ。資金繰りも苦しく、家電や自動車の部品をロボットに転用してコストを抑えている。自動車用モーターを改良して熱暴走を抑え、120kgの巨体を縦横無尽に走らせていた。ジャンク品でロボットの信頼性を高めるのはとても大変だ。製品の仕様を守ればいいわけでなく、性能限界はどこか、どうしたら限界がのびるのか試行錯誤を重ねるしかない。成功も失敗も先輩が後輩にしっかりと引き継ぎ、ノウハウを伝えていかないとどこかで雲散霧消してしまう。YRAはそれをやり続け重量級のロボットとして仕上げてきた。

YRAや九工大の活躍は他の大学を奮起させるだろう。一流の大学でなくても、資金がなくても良いロボットは作れる。限られた条件の中で知恵を出し、チームとして協力して、成果やノウハウはしっかりと後輩に伝えていく。ロボットはさまざまな技術をインテグレーションする研究分野だ。これができる技術者はどんな会社に行っても活躍する。大学研究者として学生を抱えるようになってもいいチームを作れるだろう。

(2017/7/31 05:00)

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