[ オピニオン ]

産業春秋/監査役の情熱

(2017/8/8 05:00)

企業の監査役と聞けば、どんなイメージを抱くだろう。取締役と並ぶ役員だが、地味な裏方で、もうけより法令順守や公正不偏に重きを置く頑固な大ベテラン。

監査役協会(東京都千代田区)の役員の方々と懇談し、戯画化されたイメージとの落差を感じた。多くは経理部長など重要な管理部門の責任者出身だから、自社事業に精通している。後輩を励まし、時にはいら立ちながらの業務であるようだ。

コーポレートガバナンス(企業統治)という概念とともに、監査役の重要性も改めて認知されている。しかし「我々に何ができるかは、実は経営トップ次第」という。今でも監査役は末席役員のひとりと考えている社長が少なくない。

利益を稼ぎ出す工場や営業部隊が自信を持ちすぎて「経理部は決算書類を作成すればいい」という社風では、監査は機能しない。そんな企業が大きな不祥事を起こし、会合でつい不満を漏らす仲間もいるとか。

「社長になりたい新入社員はいても、監査役を目指す人はいないね」と笑わせる一方で「業績が悪くなった時に厳しい注文を突きつけ、さらに会社が傾いたら辛いだろうな」と話す。決して“上がりポスト”ではなく、熱い情熱を持つ産業人なのだと思った。

(2017/8/8 05:00)

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