[ オピニオン ]
(2017/8/17 05:00)
変化に柔軟に対応し、新時代を創り出す人材育成に向け、工学系教育の抜本的な改革が動きだす。人工知能(AI)やビッグデータ(大量データ)、IoT(モノのインターネット)の進展など、産業社会が変化する今こそチャンスである。
文部科学省の有識者会議は「大学における工学系教育の在り方について」の中間まとめを公表した。目玉として「学科縦割り構造の見直し」「学士・修士の6年一貫制」「工学共通基礎としての情報科学教育」などを挙げる。制度改正は2017年度中にも着手する。
日本の工学教育は明治以来、各学科のカリキュラムに沿って一つの分野を深く学ぶことが良しとされていた。機械や電気、化学といった学科間の連携はほとんどなく、専門性を深めることが学術界でも産業界でも重視された。
しかし今はダイナミックに変化する時代になった。例えば自動車は、電動化や自動運転化に伴い、求められる専門知識は機械工学から電気工学へ、電気から情報へと変わりつつある。ところが“たこつぼ型”といわれる今の体系では、他分野が分からず、変化に対応できない。
産業界には「将来の技術動向がどうなるかは分からない。幅広い工学基礎を学ぶことで、変化に柔軟に対応できる能力を身につけてほしい」という声が強い。これを受け、6年一貫教育を前提に、学部高学年まで知的財産や起業教育を含む工学基礎教育を徹底し、その上で専門分野を学ぶ体系を促している。
中でも注目されるのは情報科学教育の強化だ。今後は機械、化学、材料、建築など専門分野に立脚しながら、ITを活用できる人材が必要だ。基礎教育の共通カリキュラムとしてIT教育を必修化する制度設計を提言している。
工学系学部の入学者数は、24年前と比べて5%程度減少したものの、2014年度で9万人強もいる。文科省は社会変化に対応できる人材育成コンセプトを、他学部にも展開させる狙いを持つ。先陣を切る工学教育での成功モデルに期待したい。
(2017/8/17 05:00)
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