[ オピニオン ]

社説/神鋼データ改ざん問題−すべての企業が他山の石とせよ

(2017/11/20 05:00)

企業を永続させるために、経営トップはいかなる責任を果たすべきか。神戸製鋼所のデータ改ざん問題は、そんな問いを産業界に突き付けた。企業にとって何が大切かを、再確認する機会だ。

神鋼の社内調査によると、各事業部門に対する経営の評価が収益に偏り、収益さえ上がっていれば、品質面を含めて現場が抱える課題に関心を示そうとしなかったことが、不正につながった。注文ほしさに顧客が求める規格や品質、数量を満たす能力があるかどうかを検証しないまま、仕様書を取り交わした可能性もあるという。

当事者は仕様に適合しなくても、顧客が問題がないと判断すれば買い取ってもらえる商慣行「特別採用」(トクサイ)を悪用していた。不適合品であることを明かさず、「この程度なら」という自身の判断で納めていた。独断で決めるのは「独裁」であってトクサイではない。

あるメーカーのトップは「社長の重要な役目は安全確保、法令順守、品質、納期、収益など数ある課題にどのような優先順位で取り組むかを明らかにすることと、それを徹底する組織風土をつくることだ」と指摘する。神鋼のトップは、これを怠ったのではないか。

製造業にとって品質が重要であることは論をまたない。だが学識者の中には「1990年代以降の“失われた20年”と呼ばれる経済の停滞期に、製造業の多くが生産拠点を海外へ移すことに躍起になり、品質管理の取り組みを後回しにしたのではないか」と懸念する声もある。

バブル崩壊後、国内企業の間でコスト削減のため、基礎的な研究など目先の収益に直結しにくい業務を縮小または廃止する傾向が強まった。この中で品質管理の手も緩んだのだとしたら、神鋼の問題は氷山の一角にすぎないのかもしれない。

企業が収益を追い求めるのは当然だが、目先の収益にこだわるあまり、事業の継続・発展に欠かせない大事なものを見失ってはいまいか。すべての企業経営者がわが身を振り返り、他山の石としなければならない。

(2017/11/20 05:00)

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