[ 政治・経済 ]
(2017/12/10 23:00)
【オスロ時事】2017年のノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーのオスロ市庁舎で行われた。今年7月の国連での核兵器禁止条約採択を後押しした国際的なNGOの連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が受賞し、ICANのベアトリス・フィン事務局長と、被爆者のサーロー節子さん(85)=カナダ在住=にメダルと賞状が贈られた。サーローさんは記念講演で「世界のすべての国の大統領、首相に対し、条約に参加し、核による絶滅の脅威を永遠に除去するよう懇願する」と訴えた。
ICANは、核兵器の使用が引き起こす非人道的な結末に人々の注目を集めるために行ってきた活動や、条約に基づく核兵器禁止の取り組みが評価された。
フィン事務局長は講演で、核保有国が増えたほか、核がテロリストに渡る恐れも示唆し、「今日、核兵器が使われる危険性は冷戦が終わった時よりも大きい」と警告。米ロなど核保有国や事実上の保有国イスラエル、北朝鮮のほか、日本など「核の傘」に入る国々にも核禁止条約加盟を求めた。
13歳の時、広島で被爆したサーローさんは「私が愛した街は1発の爆弾で完全に破壊された。住民のほとんどは一般市民で、焼かれて灰と化し、蒸発し、黒焦げの炭になった」と証言。核禁止条約の制定を「核兵器の終わりの始まりにしよう」と呼び掛けた。サーローさんはICANの一員として、これまで各地で証言を行ってきた。
サーローさんは核の傘に頼る国々を「共犯者」と表現。同条約への署名を拒む日本政府を暗に批判した。
核保有国は「安全保障環境の現実を無視している」などとして同条約を批判。米英仏は慣例を破り、オスロ駐在大使の授賞式出席を取りやめた。
授賞式には日本から、被爆者の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会」の田中煕巳代表委員(85)と藤森俊希事務局次長(73)が出席。広島市の松井一実市長、長崎市の田上富久市長も招待された。
(2017/12/10 23:00)