Industry4.0を見据えたイスカルの工具開発

(2019/2/25 05:00)

イスカルジャパン(株) 長竹 誉志(TakashiNagatake)

マーケティング本部 統括副本部長 兼 旋削 穴明製品プロダクトマネージャー

1.はじめに

 Industry4.0、第4次産業革命といわれて久しいが、我々の環境を見ると工場の自動化は目覚ましい進化を遂げている。これに加えて紙からデータへの移行も進み、インターネットの普及率も2013年には80%を超えた。紙から移行された電子データをビッグデータとし、インターネットを経由して自動化技術につなげていく動きは、今後さらに加速する。

 工具は一見Industry4.0とは無縁と思われるかもしれないが、実際に削られるものに直接触れているのは機械ではなく、工具であることを当社は忘れていない。自動化に対して当社が出した工具のソリューションは、以下の3つのキーワードからなる。

 ①高能率

 ②安定化

 ③クイックチェンジ

 Industry4.0は見方を変えると標準化であり、ベンチマークの効率が悪いと、すべてで効率が悪くなるといったリスクをはらんでいる。突然の欠損や切りくず詰まりなどでの緊急停止があると、これもまた非効率となる。そして、あくまでも消耗品である工具は寿命で取り換えが必要となるが、この取り換え作業が誰でも簡単に、そして繰り返しの精度、剛性が自動化には不可欠である。

 これら3つの要素を高次元に高めることが、現在の当社の工具開発の基本となっている。

2.LOGIQシリーズ

図1 TangFGrip

 当社はIndustry4.0時代の要求に応えるべく、昨年にLOGIQシリーズをリリースした。効率を高めるためのキーワードはHighFeed、つまり高送りである。突切り、溝入れのイスカルとまで揶揄される当社のお家芸でもあるGripシリーズは当社の歴史ともいえ、今回の新製品でも飛躍的に生産効率を上げる進化を遂げている。TangF Gripはチップブレーカーの形状を変え、高負荷でも高い安定性を維持する。

 しかし、いかに剛性の高いチップでも、それを従来のブレードに装着して使用すると100%の性能は発揮できない。そこでY軸方向へ送れるホルダーを開発した。当初は機械のY軸補正を使用する構造であったが、これでは機械のプログラムを変えたり、システムロックを解除したり、またY軸制御の範囲内でしか使用できないといったデメリットがあったため、現在ではX軸でY軸負荷がかかるよう設計変更されたものとなっている。

 この高い剛性を誇るブレードが完成したことにより、TangFGripHighFeedの性能が100%生かされることとなり、外径100mmの突切り加工を最大でわずか7.5秒で突っ切ることができる。これは、一般的な突切り工具の約4倍の速度となる(図1)。

図2 LOGIQ3CHAM

 JIMTOF2018で大きな話題となったのが“LO-GIQ 3 CHAM”、3枚刃のヘッド交換式のドリルである(図2)。

 ポケット最大化と、切れ刃が増えることにより増加する切削抵抗を低減、進入時の振れを抑えるために、ウェーブ切れ刃、セルフセンタリング機能を持った形状とすることで、一般的な鋼系で切削速度80~120m/min、送り0.6~0.7mm/revという非常に高いスピードでの加工を可能にした。

 また、ヘッド交換式とすることで、本体を機械から取り外すことなくヘッドを交換可能であり、段取り替えの作業性を飛躍的に高めた。

図3 SUMOCHAMに径4.0~5.9mmを追加投入

 すでにお馴染みの2枚刃SUMOCHAMと比較するとヘッドの脱着性も改善されており、より少ない動作時間でヘッドを交換することができる。脱着に使用するキーは刃物を傷つけないよう樹脂製となるが、カーボン繊維の混合比率を高めることで、繰り返しの使用にも耐えられるようにした。ヘッド交換式ドリルの特徴は刃数を増やすことで送りを上げられることと、本体がスチール製であることから、加工途中での折損がなく突発的なトラブルが起こりにくいこと、そして機械に付けたまま交換可能であることで、生産性向上、安定性、クイックチェンジを実現できることである。当社のヘッド交換式ドリルは3枚刃のLOGIQ 3 CHAMばかりではなく、従来の2枚刃SUMO CHAMでも今回新たに径4.0~5.9mmを追加投入した(図3)。

図4 脱着キー

 ここまで小さくなると、交換する際に落としてしまったり、見えにくいのでなかなか取り付けるのが難しいと考えられたことから、脱着には従来のキーを使った交換方法ではなく、配達時のケースそのものを脱着キーとすることで問題を解決した(図4)。

 これまでの6mmまででも業界最小径であったが、4.0~5.9mmを追加投入することで、これまでソリッドドリル以外の選択肢がなかった領域で、さらなる生産性向上を実現する。

3.おわりに

 イスラエル本社では、門をくぐると世界有数の本社工場が目の前に現れる。そこには大きな文字で“WhereInnovationNeverStops”と書かれている。さらに加速する偏角に対応すべく、当社はこれからも革新的な工具を開発していく。

(機械技術2019年3月号より)

(2019/2/25 05:00)

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