モノづくり日本会議/ロボット研究会「介護施設へのIoT・ロボット導入促進セミナー&マッチング会」これから求められる介護現場のテクノロジーとは?

(2021/2/12 05:00)

モノづくり日本会議は近畿経済産業局と共催で1月22日、ロボット研究会「介護施設へのIoT・ロボット導入促進セミナー&マッチング会」をオンラインで開いた。大阪産業局、i―RooBO Network Forumが企画運営。介護現場の業務軽減を目的とする技術開発が近年進む中、課題解決に向けたアイデアやヒントを得るために、行政・開発企業・介護事業者がそれぞれの視点から講演を行い、マッチングへの道を探った。

あいさつ

DXで業務効率改善

近畿経済産業局 地域経済部次世代産業・情報政策課課長 大塚公彦氏

コロナウイルス対策は介護現場にも大きな負担をかけている。経済産業省はDX(デジタル革新)推進を大きな目標に掲げているが、デジタル化は製造現場などだけでなく、介護現場や付随するバックオフィス的な業務の効率改善にも役立つはずだ。介護の現場にロボット、IoT(モノのインターネット)技術の導入を促進して、よりよい介護サービスを提供していただきたい。

講演 介護現場革新の取り組みについて

一元窓口で相談対応

厚生労働省 老健局高齢者支援課介護ロボット政策調整官介護ロボット開発・普及推進室室長補佐 山田士朗氏

高齢者の急増と生産年齢人口の急減が進み、今後より多くの方々に医療福祉に携わっていただかないと現場が回らない。2025年には245万人の介護人材が必要で、16年から見て55万人増やさなければならないとのデータもある。

また、感染症の拡大のもと、対面以外の手段をできるだけ活用する観点から、介護現場での生産性向上に重点的に取り組む。18年には介護現場革新会議の基本方針をとりまとめ、生産性向上のための業務改善の取り組みや手順書もまとめた。これらを元に、19年度には全国7自治体でパイロット事業を実施し、20年度には都道府県が主体となる革新を全国展開している。

21年度も引き続き、横展開として、地域のモデル施設の育成や、全国の介護事業者に対する支援を実施していく。必要な介護ロボットや機器の導入費用へのサポートや、介護の魅力発信、職員の定着支援にも力を入れる。

介護ロボットの開発から普及までを加速させる取り組みとして、ニーズ側、シーズ側両方からの相談に一元的に対応する窓口や、開発実証をアドバイスするラボ、現場で実証するフィールドを具体的に運用する、プラットフォーム事業を進めていく。

講演 介護現場でのAI・ICT・ロボットの活用の可能性と課題

資格とプラットフォーム整備

善光会 理事最高執行責任者統括施設局長 宮本隆史氏

05年に設立した社会福祉法人で、オペレーションの模範となり、業界の行く末を担う先導者となることを理念として掲げている。13年には介護ロボット研究室を設け、現在は人工知能(AI)研究やシンクタンクにまで拡張している。

介護業界から見た日本の課題は、社会保障費の増大による介護費用の増大と、介護職員の時給の問題が大きい。事業所だけでなく業界は、研究とともに啓蒙(けいもう)・発信もしなければならない。

当法人がICTを活用する取り組みとして、ハイブリッド特別養護老人ホームプロジェクトがある。人とモノを掛け合わせて介護現場のオペレーションを考える。介護士の職員の負担を25%削減するのが目標だ。

介護職員の生産性向上には、現在行っている業務を分解して洗い出す。さらに、業務やオペレーション全般を見て、全体的な方針や改善策を考える。そのため、移乗機器からセンシング機器などまで、さまざまな機能を持った介護ロボットやICT機器が当法人の現場で活躍している。

介護ロボットの導入・活用について、現場の視点と施設管理者の視点では少し差がある。また、導入してすぐ使えることは基本的にあり得ない。自分の施設の課題をきちんと特定して運用することが必要だ。

社会や介護業界に対して貢献するため、二つの新たなサービスを提供している。一つは人材育成に向けた資格「スマート介護士」を設けている。もう一つ、さまざまな機器を統合してデータベース化する、スマート介護プラットフォーム「SCOP(スコップ)」開発に取り組んでいる。利用者がサービスを受けてどうなったかも評価する。

利用者からすると、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなど施設が変わっても、介護サービスとして受けていることには変わりがない。その人らしく自立した生活が送れるよう、事業所が連携し、技術革新を通し、それを支えていく。

開発企業プレゼンテーション

高齢者自立支援サービス「LASHIC」

インフィック 執行役員管理本部長 花島一誠氏

在宅介護から始めて施設介護など、20年来介護の現場を運営している。事業者の声、高齢者ご自身の声も聞こえてくる。介護保険でできることにも限りがあり、保険外の自社サービスをスピンアウトし、海外展開も視野に入れている。

センサーとクラウドを使ったシステムを自社運営している。室内センサーで温度、湿度、明るさ、運動量を計測しつつ、睡眠センサー、ナースコールも統一のインターフェースで管理する。状態を把握する業務をITに任せれば、ケアを考える時間がもっと使えるはず。ケアの質を上げ、予測に基づく行動変容などを通じて、高齢者のプライバシーを守りつつ、自立支援を促す。今後のAIの成長にも期待する。

ヒーリングコミュニケーションデバイス「かまって『ひろちゃん』」

ヴイストン社長 大和信男夫氏

赤ちゃんを想起させるぬいぐるみのロボットを介護施設に導入する実証実験を行っている。人間の赤ちゃんの録音データによる声を発するし、落としても投げられても壊れない。加速度センサーが入っていて、構ってもらうと泣いたり喜んだりする。できる限りシンプルな構造にするため、顔の表情がないのだが、キャラクターを自由に設定して楽しんでもらっている。

高齢者に癒やしを与えたり、自発的なコミュニケーション促進に役立ててもらうが、スタッフ側の負担軽減やストレス軽減にもなることを検証している。実証実験の参加施設を募集中で、提供機材も返却せずそのまま使っていただく。クラウドファンディングによる資金調達も順調に進んだ。

自立支援型見守りシステム「A.I.Viewlife」

エイ アイ ビューライフ代表 安川徹氏

介護ロボットの見守りシステムを18年10月に発売し、48施設で900台のセンサーが稼働している。ニーズとして一番多かったのはやはり転倒予防。訪室回数を減らすことも、ちょうどコロナウイルス対策として絶大な効果があり、東京都などの補助金を得てデジタル化のアシストを行っている。

具体的には赤外線レーザーを使った広角のシルエット画像で部屋全体をセンシングして、人の動きを捉え、これに呼吸など生体センサーを連動させる。夜勤で訪室する機会を減らすと、介護する側だけでなく、される側のストレスも軽減できる。また、常時データを経時変化的に取ることで、要介護度が進まないよう、取り組むこともできる。

介護ワークシェアリング「カイスケ」

カイテク社長 武藤高史氏

即戦力の有資格者をすぐに呼べる人材支援プラットフォームとして、日本初のサービスを自負している。私自身家族の介護をきっかけにこの世界に入り、人材にフォーカスすることの重要性を感じて会社を立ち上げた。

人材不足は深刻で、急な欠員や手薄な曜日・時間帯が生じることが多い。その結果、人材紹介や人材派遣の金額も高騰する。従来の1事業所で数人から数十人を雇用するやり方から、コネクテッドワーカー構想として、数十人から数百人の有資格者が地域でつながるようにする。取り合いでなく助け合いの世界を、デジタルで簡単に作る。事業者とのマッチングをして、直接の雇用計画を結び、良い人がいれば採用にもつなげてもらう。

高齢者向けレクリエーション「介護レクリエーション」

BCC スマイル・プラスカンパニーカンパニー長 前場大輔氏

IT企業に営業員を派遣する事業と、介護レクリエーション事業を展開している。人を支える人を支える、という理念だ。絵を描いたり脳トレをしたり、といったさまざまなレクリエーションが考えられているが、高齢者の方の日々の生活に喜び、生きる楽しみを見いだしてもらう活動と定義している。

「介護レク広場」という、レクリエーションを無償提供するサイトには5万人以上が登録してもらっている。また、レクリエーションを体系立てて学べる資格を設け、通信講座・通学講座も提供している。介護現場とロボットなどのメーカーをつなぎ、実証実験をしてもらうことで、介護施設と従事者、メーカーとの間のミスマッチを解消していく。

(2021/2/12 05:00)

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