モノづくり日本会議 オンラインセミナー「中小企業の令和時代の事業継続対策 新たなリスクに対応するために」

(2021/5/20 05:00)

モノづくり日本会議と中小企業基盤整備機構は共催で4月15日、オンラインセミナー「中小企業の令和時代の事業継続対策 新たなリスクに対応するために」を開催した。東日本大震災や近年頻発する豪雨災害、さらに昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行を受け、企業のBCP(事業継続計画)への関心が高まっている。新時代に考慮すべき製造業のリスクを整理し、新たなBCP策定について考察した。また、中小企業強靱(きょうじん)化法に基づく事業継続力強化計画の認定制度についても紹介した。

新時代のリスクと中小企業BCPの考え方

BCP/BCM策定・運用アドバイザー 日本リスクコミュニケーション協会理事/講師 昆正和氏

製造業、経営資源を滞りなく調達

東日本大震災から10年が経過し、多くの企業が地震に特化したBCP策定に着手してきた。しかし、近年は想定外の巨大な豪雨災害や、新型コロナウイルスの感染拡大も実際に起こっている。地震だけのBCPでは対処できないと考える企業も多いはずだ。

製造業にとっての持続可能性は、必要な時に必要な経営資源を滞りなく調達して利用できるサイクルができあがっている状態を指す。しかし経営資源やサイクルがうまくいかなくなるリスクは増えてきている。四つの大きなリスクからいかに企業を守るか。大企業でも中小企業でも等しく直面する。大きな災害はどうしようもないと考えるのではなく、少しでも影響を低減する努力をしなければならない。そのための手段がBCPだ。

大地震

阪神・淡路大震災は戦後最悪の大災害と言われたが、その16年後に東日本大震災が起きた。さらに熊本地震、北海道胆振東部地震が発生した。日本は地震のメッカのようなところで、どこに事業所を置くかというよりも、地震が起きることを前提にBCPをしっかり作る事が重要だ。今後特に対処しなければならないのは首都直下地震と南海トラフ大地震。首都直下の場合、下町と呼ばれる地域の製造業の場合は、火災のリスクをBCPに組み込まなければならないし、都市部の帰宅困難者に対応した備蓄も必要だ。南海トラフは太平洋ベルト地帯に沿うように起こり、物流の大動脈が寸断される。原材料、部品、製品、商品が動かない状態が続く可能性もある。

大地震が企業に与える影響はインフラの被害によって多種多様だ。自社が被災していなくても、顧客や取引先が被災しサプライチェーンの流れが止まることもある。地震対応BCPのポイントはまず従業員の命を守る手順と緊急連絡体制の確立だ。実効性ある防災・減災対策を早期導入する。絵に描いた餅ではなく、事業継続力強化計画の認定を取ることも良いだろう。人・モノ・資金の代替資源を確保し、サプライチェーンリスクも可視化する。サプライヤーや顧客を増やしてリスクを分散する。また、遠隔地企業との相互応援協定も必要だろう。

気候変動

日本で事業を営む企業は台風、豪雨やこれらに伴う土砂災害、洪水にまず注意する。一方で熱波による乾燥化や山火事も今後リスクとなる。地震と豪雨災害を比べると、地震は余震はあってもひとたび起きると落ち着いた状態が続く。台風・豪雨はワンシーズンの間に繰り返しやってくる可能性があり、復旧する余裕を与えない恐れがある。

豪州では19年から猛烈な熱波と大規模な山火事、メガファイヤーが発生した。米国や欧州でも熱波被害があるが、いずれ日本でも起こる可能性が高い。

水害についてはハザードマップの確認が重要だが、電力不足も問題となる。受電設備のかさ上げや停電対策も必要だろう。

代替人員と資金確保

感染症

感染症の大流行は10年から40年周期で起こると言われてきたが、現在はパンデミックが起きやすい状況にある。現在は人の動きが抑制されているが、コロナ収束後には多くの旅行者とビジネスマンが世界中を駆け巡る時代が戻る。そうすると小さな村で起こった伝染病が世界に拡散する。感染症は新型ウイルスだけでなく昆虫が媒介するものもあり、気候変動によって昆虫などの生息域が北上して伝染病も起こりやすくなっている。

パンデミックがやっかいなのは、世界経済を麻痺(まひ)させ、止めてしまうこと。企業には業績悪化や解雇といった影響が出る。今回コロナウイルスをリアルタイムに経験している最中だが、収束を願うだけでなく、確実にパンデミック対策をBCPに組み込んでいただきたい。もちろん個々の企業が対処するには限界がある。当たり前だができることを徹底してやることがポイントだ。デスクワーク系の業務はテレワークに常態的に移行し、感染予防の知識を従業員に周知させる。従業員の意識を変えるには、上層部の意識が変わらないといけない。地震のBCPと同様、代替人員と資金の確保も重要だ。また、業種によってばらつきはあるが既存の製品をインターネットで露出するといった販路の拡大や、既存の製品・技術を別の用途に転用する、といったことも考える必要がある。

サイバー攻撃

ソフトウエアの脆弱(ぜいじゃく)性につけ込む従来型攻撃に加え、特定の企業、団体、個人をターゲットにする標的型メール攻撃、ランサムウエアなどが増加している。外部とつながってインターネットやパソコンが末端にあるということは、まさにそれらを通じてサイバー攻撃が行われることになる。ドイツで起こった事件では溶鉱炉の制御システムが破壊され、溶鉱炉が停止できなくなってしまった。大規模停電や工場の生産・出荷停止といったことも起きている。

大切なのは工場のIoT(モノのインターネット)やスマートファクトリーの操作にかかわる従業員のリテラシー向上だと考える。技術の部分を堅牢(けんろう)にするだけでなく、どの部分からサイバー攻撃が起こるかといった具体的なものを挙げて教育する。だめ押しでサイバーセキュリティー対策も講じる。人が無防備ではいたちごっこになってしまう。

まとめ

新しい大きなリスクを説明したが、これからのBCPはマルチハザードに対応しなければならない。複数のリスクを後回しにせず自社のBCPに組み込んでいく。これまでBCPを作ったところは非常に大きなパワーと時間を要したと思う。新しいリスクへの対応も様子見ではなく、何が起ころうとも事業を継続するために取り組んでいただきたい。海外のBCPは、複数のリスクを一つのBCPに組み込めるようにしているところが多い。現在のBCPを見直して、コンパクトに作る方法を模索してほしい。

そのためにリスクアセスメントの表に複数の災害をまとめると、意外にコンパクトに集約できる。BCPを見直す際は実行体制など共通化できる部分と、災害ごとに対応する個別に作る部分とを意識して進める。リスクの規模と事業への影響も想定しながら作る。

経営を「強靭化」する支援 中小企業基盤整備機構「簡易版BCP」作成

中小企業に対する事業継続に関する支援は、中小企業庁が10年以上前からBCPの普及啓発に取り組んでいるが、中小企業におけるBCP策定率はまだ高くない。中小企業基盤整備機構は、2019年7月に施行された中小企業強靱化法に基づき、実践的で効果的な事業継続力強化計画の策定を通じ、支援している。

事業継続力強化計画は自社の災害リスクを認識し、防災・減災対策の第一歩として、災害計画などを記載した計画。中小企業等が国へ申請し、認定後、経営や事業の継続に向け、金融面・税制面などから支援する。取り組みやすいため「簡易版BCP」とも言われる。1社で作成する単独型、複数社や組合・グループなどで作成する連携型がある。税制措置、日本政策金融公庫による低利融資、ものづくり補助金等の加点のほか、認定ロゴマークによる信用力向上、経営の棚卸しと改善につなげて平時の経営強靱化にも役立つ。連携型では、事前対策のコスト抑制、被災しなかった企業での代替生産にも役立つ。

強靱化支援のポータルサイト(https://kyoujinnka.go.jp)やチャット相談サービス、マッチングサイト等を活用していただきたい。

(2021/5/20 05:00)

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