モノづくり日本会議/ロボット研究会「協働ロボットの現在・未来」

(2021/7/20 05:00)

モノづくり日本会議は6月10日、ロボット研究会「協働ロボットの現在・未来」をオンラインで開催した。従来の産業用ロボットはほとんどが工場内に設置され、稼働中に人に接しないよう柵に囲まれていた。それに対し、人に接すると動作を停止するなど安全性を高めた協働ロボットは、人に近い場所で作業を行え、加工・組み立て以外の分野にも活躍の場が広がっている。ロボットSIer(システムインテグレーター)、ソフトウエア、ロボットメーカー、代理店という四つの視点から、今後の発展の可能性を探った。

業務効率化の道具としての協働ロボット導入の課題とポイント

i-RooBO Network Forum会長/IATCプロデューサ ブリッジ・ソリューション社長 坂本俊雄氏

工程分析と導入目的を明確に

大阪を中心に新しいサービスロボットの開発を進めようと2004年に発足した「i―RooBO Network Forum」は15年に一般社団法人化した。ロボットビジネスの会員ネットワークとして、ロボットテクノロジーの力で社会課題を解決し、生活を豊かにしようと考える。

ロボット導入の課題は、導入コスト、人材不足、情報不足だ。周辺設備や設計など合わせたトータルコストは、本体の3倍から5倍と考えてよい。私たちのようなSIerだけでなく、ユーザー側にロボットを使える人材が不足しているし、中小企業経営者や工場責任者は情報不足になりがちだ。

ロボットSIerの役割も重要となる。システムインテグレーションとして、工程分析からシステムを企画、構想、設計、設備工事した上で、全て動くような状態にして、ティーチングも行う。大企業には強力な生産技術部門がある。中小企業は早い時期に適切なロボットSIerと出会い、一緒に構想、企画するのが近道だろう。

協働ロボットの定義は「安全柵なしで人と一緒に作業できるロボット」ということになる。従来の産業用ロボットと異なり、形も機能もさまざまで、自走もしくは台車で人が移動できるケースも多い。安全柵を設けるスペースのない中小企業や食品産業などへの導入が進むだろうし、画像処理や人工知能(AI)との親和性も高い。タッチパネルでの操作など「イージー・ツー・ユース」も特徴だ。

導入へ向けては、安全柵がない分、リスクアセスメントが重要となる。産業用ロボットより遅い速度や、あまり大きくない可搬重量も課題となる。ロボットの設計思想やプログラミング方法そのものも産業用ロボットと異なるので、従来のSIerは戸惑うこともあるだろう。

産業用ロボットは設備であり、協働ロボットは道具である、とも言える。そもそも協働ロボットが必要か、協働ロボットの導入を目的にしていないか、自問自答してもらいたい。工程分析と導入目的を明確にし、単なる人の作業からの置き換えでなく、ロボットだからできる作業方法を考える。

SIerもロボット導入ありきでなく、コンサルティングから立ち上げまで一貫して手伝っていかなければならない。

物流現場におけるロボティクス、ロボットピースピッキングシステム「RightPick」

オカムラ 物流システム事業本部マーケティング部プロモーション企画課シニアコンサルタント 飯寺亮介氏

初めて見る商品も認識して把持

協働ロボットと既存のマテハンを組み合わせた物流システムや、工場物流をいかに高度化していくかといった事業にも取り組んでいる。Eコマースの拡大で荷物がどんどん小口化し、パレットやケースでなく、ピースでピッキング出荷しなければならないものが増えている。作業ボリュームが倍数的に増えているのに、物流はエッセンシャルワークで止められない。自動化しなければならないのが現場の状況だ。

ピースピッキングは人間には簡単でも、商品が柔らかだったり変形したりするものだと、ロボットには非常に難しい作業だ。しかし、ここ数年技術が進化して現実的になってきた。物流現場に導入しやすい協働ロボットや、AIや画像認識を使ったモーションプランニングが進化し、機械学習で精度が上がっている。当社は、ロボティクスをつかったさまざまな製品を多数そろえ、それらを組み合わせて物流自動化の仕組みを提供している。

米RightHand Robotics社のピッキングシステム「RightPick」は、範囲(Range)、速度(Rate)、信頼性(Reliability)の「3R」が特徴だ。目に相当するビジョン、アーム、ハンド、コントローラーといった各部をまとめて提供するもので、自社開発のソフトウエアを使っている。

一番の特徴はマスターレスのピッキングということで、3次元の形状をマスターとして登録する必要がない。機械学習した動作モデルを使い、初めて見る商品でもビジョンで認識して、つかむことができる。特定の顧客の現場の商品だけでなく、世界中のロボットからピッキングの結果を解析し、機械学習してモデルを更新する。

まだスピードは人間にかなわないし、コスト面の課題もある。また、人の作業をロボットに置き換えるだけの自動化でなく、出荷のコンテナを組み立てるような部分も含めたレイアウト全体を考えなければならない。今後はロボット化を前提にした設計を、顧客と進めていきたい。

KUKA 協働ロボット LBR iiwaの紹介

KUKA Japan セールスエンジニア 熊澤心太郎氏

全ての軸にトルクセンサー

独KUKAグループのロボットシステムインテグレーター部門、ロボティクス部門、物流関係部門のうち、KUKA Japanはロボティクスに属している。ロボットの販売をはじめ、メンテナンス、修理サポート、トレーニング、デモンストレーションを行っている。産業用ロボットでは3キログラムから1トン近い可搬重量までの、さまざまな特殊仕様のものを多数そろえる。

LBRiiwaは7軸の人協働ロボットで、LBRはドイツ語で軽量ロボットを意味し、iiwaはインテリジェント・インダストリアル・ワーク・アシスタントを略した。今後6軸のLBR Easyも発売予定だ。

LBRiiwaの特徴は全ての軸に標準でトルクセンサーが入っており、力を検知しながら制御できるインピーダンス制御が可能だ。はめ合いしにくいようなところでも、人間が手で動かすように組み付け作業できる。ちょっといびつな形をしているが、これは人間の指が挟まらないような設計だ。

開発の経緯としては宇宙空間で使うために設計されたもので、非常に軽くしている。一般の産業用ロボットと比較すると、2軸と3軸の間に1軸増えているようなイメージだ。ロボット言語としてはJavaによるプログラミングなので、javaを知っていればロボットを知らなくても動かせる。

繰り返し精度は産業用ロボットに比べると少し落ちるが、メディアフランジと呼ぶ、先端部の電気やエアーのインターフェースや、基本的にタッチパネルを用いて、スティック状のものでロボットを動かすなど、使いやすくした。

バネ制御というか、あるポジションに居続けるよう指示すると、手で押して離した際に元のポジションに戻り、バネのような動きに見える。また、ピン挿入では、ピッチが短いところへの挿入も可能だ。

カメラなど他の機器は使わずに、正しい位置出しをプログラムして、ボルトのネジ締めなど多様な場面に用いる。繊細な動作と、複雑なプログラミングが可能だ。

協働ロボットの期待と可能性

住友商事マシネックス メカトロニクスイノベーション本部ロボティクス推進室 渡邊健太氏

人とロボットの真の共存

韓国Doosan Robotics社の協働ロボットを日本国内で販売し、マーケティングからサポートを行っている。今年ロボティクス推進室を社内に設け「人とロボットの真の共存」をビジョンに掲げた

協働ロボットは必ずしも効率化を図る生産設備ではない。産業ロボットと比べて精度は低く、安全性を考慮して動作は低速であるし、重量物も持てない。メリットは柔軟性があることだ。設置が容易で、安全面に優れ、移動しても使える。人より優れたものではなくても、人に近い使い方ができるロボットだ。

期待される役割は、労働力不足の解決と、人材の有効活用だ。労働力が足りない製造現場などに協働ロボットを導入していかないと、製造が成り立たなくなる。導入に当たってはSIer任せでも、販売者、メーカー任せでもうまくいかない。適切な役割を擦り合わせて、三位一体で検討しなければならない。

その中で当社は、まずユーザーに対してロボットの操作から始まって7回にわたる徹底した教育コンテンツを提供する。また、ロボットを少しでも人に近づけるためのソリューション開発を始めている。共創による顧客課題解決に向けたオープンイノベーションラボを羽田・天空橋駅直結のHANEDA INNOVATION CITY内に創設した。

狙いは製造業におけるモノの移動の最適化で、例えばアセンブリー工場内でモノをいかに搬送し、組み付けるかなどを協働ロボットなどを使って考える。工場内のラインの稼働状況に応じて、現場が情報を総合的に共有し、自律走行型搬送ロボット(AMR)に協働ロボットが加わった形で汎用機化する。ネットワークやシステムも含めた高度なコミュニケーションを、ラボにおいて実証していく。

当社はロボット単体の販売から、教育、システムインテグレーション、将来を見据えたソリューションまで、一貫して提案できるような事業を目指している。

(2021/7/20 05:00)

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