社説/環境省の再エネ推進交付金 脱炭素を地域の活性化につなげよ

(2021/9/21 05:00)

脱炭素を地域経済の活性化につなげたい。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーで住民の電気を賄い、地域外に支払う燃料費を節約する。地域電力会社が新しい雇用を生み、電気自動車のシェアリングサービスが産業の一翼を担う―。政府は6月、こんな地域づくりを掲げた工程表「地域脱炭素ロードマップ」をまとめた。二酸化炭素(CO2)削減と経済成長を両立した将来像が描かれている。

環境省はロードマップを実行に移す「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」の新設を目指し、2022年度予算の概算要求に200億円を盛り込んだ。自治体が再生エネ発電や蓄電池、省エネ設備を導入する費用の最大75%を支援する。

小泉進次郎環境相は「使い勝手のいい制度を狙った」と語る。440を超える市町村が、CO2ゼロを目指すと宣言している。意欲的な自治体が継続的に事業に取り組めるように交付金は30年度まで続ける。

決して巨額ではない。地域脱炭素ロードマップは政府が100地域を選び、政策総動員で支援するとしている。100地域すべてが交付金の対象となると、各市町村の支援は2億円程度。同省は交付金を呼び水に民間の投融資を誘発すれば、事業規模が大きくなると説明する。

地域脱炭素ロードマップでも自治体と金融機関、企業の連携を推奨している。例えば人口1000人の地域で交付金を活用して民間資金総額40億―100億円の事業を興し、脱炭素達成後も年3億―5億円の利益創出効果が続くと試算する。

成果を出すため自治体には金融機関や企業を巻き込み事業を立案する能力が求められるが、課題は人材だ。将来の産業構造を描かないと、CO2が減るだけで、地域の成長につながらない。知見を持つ人材の派遣など、国による支援が必要だ。

地方では脱炭素が環境政策にとどまり、経済政策と認識されているとは限らない。まずはロードマップで掲げた将来像を国と地域が共有し、交付金の実りを大きくしてほしい。

(2021/9/21 05:00)

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