[ 科学技術・大学 ]

改変細菌で免疫活性化、がん細胞が死滅−韓国・全南大学などマウスで成功

(2017/2/12 07:00)

  • 遺伝子改変細菌が腫瘍に入り込むことで免疫系が活性化され、がん細胞を攻撃する(Carla Schaffer / Zheng et al. / Science Translational Medicine)

遺伝子を改変した細菌株をがん組織に侵入させることで、免疫反応を活性化し、マウス体内のがん細胞を殺すことに韓国・全南大学などの研究チームが成功した。通常は食中毒を起こすサルモネラ菌の一種を無害になるよう改変し、ヒト結腸がんを発生させたマウスに注射したところ、20匹中11匹で、腫瘍の大きさが検出限界未満まで縮小したという。一部で転移も予防できた。8日付の米科学誌サイエンス・トランスレーション・メディシンに成果が報告された。

これまでにも腸内細菌であるサルモネラ菌株は、さまざまな治療薬を体内に送り込むのに利用されてきた。ただ、細菌を使って免疫を活性化するこれまでのがん治療は、複数回の細菌の注射が必要となる場合が多く、細菌が毒性を持ったり、がんが再発することもよくあるという。

そこで研究チームでは、感染型食中毒を起こすサルモネラ・ティフィムリウムに着目。この細菌は壊死した組織や腫瘍といった酸素濃度の低い環境に集まりやすいため、「トロイの木馬」のように、がん組織に侵入して内側からの攻撃に使える。そのためにサルモネラ菌株を遺伝子改変で弱毒化するとともに、FlaBというたんぱく質を分泌させ、生体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を捕食するマクロファージ(貪食細胞)のがん排除活性を誘発するよう仕向けた。

こうした細菌株を20匹のマウスに投与したところ、3日後に肝臓、肺、脾臓といった健康な臓器にはサルモネラ菌が侵入していないことが確認され、逆に結腸がんに1万倍も多く存在していた。120日後には20匹中11匹で腫瘍が検出されなくなり、それらのマウスは元気を取り戻したという。

このように、ヒト結腸がんのマウスモデルでは、サルモネラ菌とFlaBたんぱく質の組み合わせで腫瘍が縮小し、生存期間も延長、転移が予防された。一方で、FlaBを作らない細菌を投与したマウスは、がんの量が多少減少したが、腫瘍が再度増殖する傾向が見られた。

ヒトの体内でも、細菌が毒性を持たず、同じような免疫反応を引き出せれば、バクテリアを使った有効ながん治療法になる可能性がある。研究チームでは動物モデルでの治療法を改善しながら、近い将来、ヒトでの臨床試験を計画している。

(2017/2/12 07:00)

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