4月18日は発明の日/付加価値提供で企業の競争力を支援 知財情報サービス

(2021/5/13 05:00)

業界展望台

特許や商標、意匠など、知財情報を積極的に活用することは、企業が競争力を得るための重要な経営戦略だ。この取り組みを支援するのが知財情報サービス業。知財情報の検索・収集といった調査、分析、出願、管理などのシステムを提供する。ユーザーがより利便性の高いサービスを求める中で、知財情報サービス各社はより使いやすく、より分かりやすいソリューションとサービスの提供を目指している。

有料ゆえの使いやすさ

知財情報は事業や商品の戦略を立てる上で不可欠だ。それ故、専門部署や特許事務所ばかりでなく、研究開発部門や商品企画部門など多くの関係者が必要としている。

現在、特許庁が提供する特許情報プラットフォーム、J―PlatPatは無料で利用でき、検索をはじめとしたツールの機能も運用当初から大幅に向上している。とはいえ、民間事業者の提供するシステムと比較すると、使いやすさや機能の点で追いついていないのが実態だ。

頻繁に利用するヘビーユーザーでもなければ使いこなしは難しいといわれている。日本パテントデータサービス(JPDS)の仲田正利社長は「たまにしか使わない人は無料の公的データベースで十分と考えがちだが、それは間違いだ」と断言する。

民間の有料サービスは単に検索だけ、表示の工夫だけといったことではなく、一段と充実した機能の搭載、研究・開発担当者といった知財専門家ではない人でも分かりやすく使いやすいシステムであることを指向した製品開発を進めている。各社、使いやすさとともに、海外データなども踏まえた表示、分析などの付加価値を盛り込んでサービスの価値を高めている。

チェックにAI活用

これまで特許調査・分析は、特許法や特許分類などの専門的な知識が必要とされ、知的財産部門の限られた人たちがその役割を担っていた。昨今、IPランドスケープに代表されるように、ITを駆使して特許情報を事業戦略に活用しようという機運が高まっており、多くの人が知財の活用を模索している。

Patentfieldが開発・運営する「AI特許総合検索・分析プラットフォーム Patentfield」は人工知能(AI)検索機能により、キーワードや文章を入力するだけで簡単に関連特許を検索でき、直感的な操作でパテントマップの作製・分析をシームレスかつ短時間に実現する。

同社の村上直也社長は「日本産業界の技術革新を担ってきた知的財産を活用するためのモノづくり支援プラットフォーム事業にフォーカスし、日本の技術産業が将来にわたりグローバルで活躍できるよう産業界の発展に貢献したい」と、事業に込めた思いを語る。

特許調査の大きな課題の一つである検索結果のチェック作業において、AI分類予測機能がチェック作業の効率化を図り、業務を大幅に効率化する。また、検索結果からキーワードベースによる競合会社のポートフォリオ分析や、直感的に共同出願先と出願件数を把握できる共起ネットワークマップなど、デザインや機能を駆使した「見せるためのマップ」を意識した機能を充実させている。

海外商標を効率良く

知財情報は技術面からは特許が中心になるが、商品からの視点では商標が重要になる。特に商品が世界中に流通する現代では海外の商標調査は欠かせない。JPDSが提供する商標情報検索サービス「ブランド・マーク・サーチ」は2018年にスタートした、日本の情報提供会社として初の海外商標も対象とした検索サービスだ。この4月から中国商標オプションの提供が開始された。

ブランド・マーク・サーチは対象とする海外商標を米国、欧州、国際商標と収録範囲を拡大してきた。そうした中、日本の企業、特許事務所からは冒認出願や模倣品などの問題がある中国商標検索の要望が非常に大きかったことから、サービスを拡大した。

これまで、海外の現地調査は多額の費用をかけて、それぞれの現地事務所に依頼していた。このサービスを活用することで、明らかに触れる候補を事前に除外し、調査依頼件数を絞ることで費用を圧縮できる。

中国商標オプションの特徴は、日本向けサービスとして自社でデータ保有・構築すること、インターフェースから分類ガイダンス、ステータス情報などを日本語にマニュアル翻訳したものを提供することなど。さまざまな項目を掛け合わせた検索、見やすくカスタマイズ可能な日本語表示、エクセルをはじめ、さまざまな形式での出力が可能だ。ネーミング案段階の一次調査や競合企業の出願登録状況の確認、現地の冒認出願の監視など、多くのニーズに対応する。

知財業務もスピードを

市場や競争、必要な防御範囲は国内だけにとどまらない。グローバルな知財管理ソリューションへのニーズは高い。また、選択や集中、スピードが求められるビジネス環境において、データの見える化と、自社特許・他社特許の把握や分析へのニーズも高まると予測される。

米ボストンに本社を置くアナクアは、アイデア段階からの発明提案、出願、登録、ライセンス、権利維持まで、広範囲な知財関連業務をサポートし、保有するすべての知財データを一元的に管理するためのソリューションを提供する。また、世界各国特許庁の公報データを集約した独自のデータベースとそれをもとにした分析機能、海外・国内拠点や組織ごとに設定可能な業務フロー、継続的にアップデートされる世界の知財法令データベースにより、企業がグローバルに、フレキシブルに、そして包括的かつスピーディーに知財業務を行うソフトウエアプラットフォームを提供している。

同社はフィードバックが陳腐化しないよう、素早くニーズに応えるため、技術買収・パートナーシップなど無機的な対応も積極的に行っている。

日本法人の小玉章文社長は「市場環境の変化のスピードがますます加速する現代では、“より素早く"という要素が重要だ。正確な判断に必要な知見を得るためには、関連する多様なデータを一瞬で分析し、その結果をリアルタイムで見える化できる知財管理システムが必要となる」と、スピードの重要性を強く訴える。

(2021/5/13 05:00)

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