社説/英新首相にスナク氏 与党結束し財政・経済再生を

(2022/10/26 05:00)

英国新首相の前途は多難だ。分断している与党・保守党の結束、財政健全化と物価高対策の両立など課題が山積する。月内に固める中期財政計画で金融市場の安定化を図りつつ、内政と経済の再生にいかに道筋をつけるのか、“インドの星”スナク新首相の手腕が問われる。

両親がインド系のスナク氏は現在42歳。39歳の若さで財務相に抜擢(てき)され、トラス政権による財源なき大型減税策にも批判的だった。ポンドと英国債の急落を招いた大型減税の多くが撤回され、金融市場の混乱はひとまず落ち着いたが予断を許さない。財政規律を順守した経済運営で市場の信頼を回復したい。

英国は欧州連合(EU)離脱を問う国民投票から6年で4人の首相が退任し、与党・保守党による内政は安定していない。スナク氏の財務相辞任がジョンソン元首相を退陣に追い込むなど党内は分断している。この保守党の支持率は野党・労働党から最大30%程度引き離されている。スナク政権は分断する与党の結束と経済の軟着陸という難題をクリアしなければ政権交代の危うさもつきまとう。

経済運営では財政再建に取り組みつつ、物価高に苦しむ家計の光熱費対策に取り組む必要がある。10月から半年間で家庭・企業への支援策として600億ポンド(約10兆円)を支出する計画も、来春以降の減額や出口戦略など痛みを伴う施策も視野に入れなければならない。

英国の10月の消費者物価指数は前年同月比で10・1%も上昇し、40年ぶりの歴史的な高水準にある。資源価格の高騰に加え、EU離脱に伴う東欧からの移民制限により、人件費の高騰と物価上昇を招いている。英国のインフレは米国よりも深刻だ。イングランド銀行は金融引き締めと英国債の売却によりインフレを抑制する方針だが、経済がさらに悪化しかねない。スナク政権が移民制限の緩和にかじを切るかも注目したい。

英国はEU離脱後、英領北アイルランドの国境管理をめぐりEUとの関係が悪化している。移民問題も含め、関係の再構築を経済の軟着陸につなげたい。

(2022/10/26 05:00)

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