産業春秋／中国のデフレに警戒

中国経済はデフレに陥ったのか。６月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比で横ばいにとどまり、５月の０・２％上昇からさらに鈍化した。長期化したゼロコロナ政策で縮小した内需の戻りは鈍く、６月の若者（１６―２４歳）の失業率は２１・３％に達する。

中国国家統計局によると４―６月の実質国内総生産（ＧＤＰ）は前年同期比６・３％増だが上海のロックダウン（都市封鎖）からの反動増。前月比では０・８％増に過ぎず、経済の息切れが鮮明だ。

内需を見ると、消費動向を示す６月の小売売上高は前年同月比３・１％増と５月の１２・７％増から減少。１―６月の不動産開発投資は前年同期比７・９％減と低迷が続く。不動産関連はＧＤＰの約３割を占める。

中国人民銀行は６月、景気刺激策として１０カ月ぶりの利下げに動いたものの効果は限定的。今後の景気対策が注目されるが、習近平国家主席は不動産投機を抑制しているだけに大規模対策を講じにくい。

格差是正に向けて民間企業を規制する「共同富裕」とゼロコロナ政策が不動産市況の大幅悪化など内需を想定以上に減退させた。加えて世界経済の減速が中国の輸出を鈍らせる。デフレが懸念で終わるか瀬戸際にある。