社説/高炉休止・製鉄所閉鎖 脱炭素で世界に存在感示したい

(2023/9/21 05:00)

JFEスチールの東日本製鉄所京浜地区(川崎市)での最後の高炉が16日に休止し、月末には日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)が閉鎖される。国内市場の縮小と脱炭素の流れを受け、製鉄所の再編が大きな節目を迎える。だが日本産業を支える鉄鋼の重要度は今後も変わることはない。電炉化や水素還元製鉄などへの移行により、高品質鋼材と脱炭素を両立する製鉄方法の確立が期待される。これまでに培った高い技術力を武器に、脱炭素技術でも世界をリードしてもらいたい。

世界の鉄鋼需要は人口増と経済成長により今後も増加が見込まれる一方、日本は過剰設備の見直しが課題になっていた。日本の粗鋼生産量は1億トン割れが続き、2022年は9000万トンを割った。ピークだった07年は1億2000万トン超だった。人口減に伴う国内市場の縮小や、海外での競争力低下が背景にある。自動車向けなど高付加価値の鋼板の比率を高め、収益を強化することが求められる。

産業全体で排出する二酸化炭素(CO2)のうち、約4割が鉄鋼業界とされる。高炉による製鉄の場合、鉄鉱石に含まれる酸素を石炭で除去する工程でCO2が発生する。電炉を使えばCO2排出量を4分の1に、水素還元製鉄は半減を目指している。政府は30年度に温室効果ガス(GHG)を46%削減(13年度比)する目標を掲げる。鉄鋼業界は川上産業の重責を担いつつ脱炭素の実現に貢献したい。

JFEホールディングスは5日、公募増資などで約2115億円を調達し、電磁鋼板の生産増強などに充当すると発表した。日本製鉄ともども大型電炉化を検討しており、高炉メーカーの中核設備が中長期的にどう移行するかを注視したい。

経済産業省は、製鉄工程で水素を活用する水素還元製鉄の開発に約2500億円を追加支援することを決めた。支援額は約4500億円と2倍超になる。40年の実用化を目指すという。

国内市場縮小を受け、過剰設備を整理した高炉各社。脱炭素技術を研ぎ澄ませ、これまでと違う存在感も世界に示したい。

(2023/9/21 05:00)

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