社説/東芝の上場廃止 財務基盤に懸念も再建への一歩

(2023/9/22 05:00)

東芝は上場廃止により経営の自由度を高め、再建を果たせるのか。医療機器や半導体メモリーの売却で収益力が低下し、TOB(株式公開買い付け)に伴う巨額債務も財務基盤を弱めかねない。収益基盤の強化に向けた東芝の挑戦を見守りたい。

日本産業パートナーズ(JIP)を中心とする国内連合は21日、東芝へのTOBが成立したと発表した。株主から78・65%の応募があり、必要な3分の2以上を確保した。TOBに応じなかった株主から強制的に東芝株を買い取るスクイーズアウト(締め出し)を行い、JIP陣営の完全子会社として再建を目指す。東芝株は年内にも74年に及んだ上場の幕を閉じる。

東芝と利益相反する「物言う株主」の海外ファンドが退場することは、再建に向けた大きな一歩と評価できる。東芝は原子力発電や量子暗号通信なども扱っており、経済安全保障上の懸念が緩和される意義も大きい。

東芝は2015年の不正会計発覚以来、迷走が続いた。米原子力事業の巨額損失で債務超過に陥り、海外ファンドの出資を受けたことが再建を遅らせた。この物言う株主との対立が解消し、経営体制が安定する。迅速な意思決定が可能になり、再建への歩みが進むと期待したい。

ただ経営体制の安定化と引き換えに巨額の債務を抱えることになる。JIPによるTOBの買収総額は2兆円規模に達し、この過半が銀行からの借り入れによる。最終的には東芝が返済することになるとみられ、売上高がピーク時から半減している東芝には大きな重荷になる。

東芝は収益性の高いデータサービス事業などを強化し、30年度に売上高を1・5倍の5兆円とする目標を掲げる。TOBに協力した20社超の国内連合との協業を進めるなど、既存事業の拡充や事業間のシナジーを追求し、目標に近づきたい。

物言う株主は東芝のように対立色が濃い投資ファンドばかりではない。ただ短期で利益還元を求める傾向があり、中長期戦略の共有が課題になる。東芝の事例を、物言う株主との向き合い方を考える契機にもしたい。

(2023/9/22 05:00)

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