社説/技能実習制度の廃止 新制度で深刻な人手不足緩和を

(2023/10/20 05:00)

外国人材を受け入れる仕組みが大幅に変わる見通しだ。有名無実の「技能実習制度」を廃止する一方、長期就労につながる「特定技能」の習得を促す新制度を創設するという。政府の有識者会議がまとめた技能実習制度見直しに向けた最終報告の素案は、深刻化する人手不足に対応する施策と評価したい。少子化が進む中韓などとの国際的な人材獲得競争に打ち勝ち、外国人から選ばれる日本としたい。

創設30年を迎えた「技能実習制度」は、途上国への技術移転を目的としながら実態は労働力の受け皿で、制度の目的と実態が乖離(かいり)している。賃金不払いや暴力など人権侵害も指摘される。実習生は同業他社への転職も原則認められず、失踪する者も少なくない。同制度を「発展的に解消」するとした有識者会議の素案は適切な判断だ。

新制度は2024年通常国会への法案提出を目指すという。受け入れる外国人材を「実習生」でなく「労働者」と位置付け、人材確保を前面に掲げた。受け入れ期間を原則3年とし、この期間に「特定技能」の習得を促す。基本的な日本語能力試験や技能試験に合格すれば、就労1年で同業他社に転職できる。外国人材を受け入れる企業を監視する監理団体の許可要件も厳格化する。人権リスクの抑制につながると期待したい。

特定技能は人手不足対策として19年に導入され、1号と2号がある。1号は在留期間が5年で家族は帯同できない。2号は熟練した技能が求められ、在留期間に上限がなく家族とも日本で暮らせる。6月末で1号は約17万人、2号はわずか12人。政府はまず1号への移行を促す。受け入れ人数は業界ごとに上限を設けるという。労働市場を混乱させない設定が求められる。

外国人材は国際的に安い賃金や円安を背景に、日本への魅力が低下しているとされる。不安な日本での生活支援や処遇の改善が必要だ。経団連は国際的人材獲得競争を見据え、外国人を「受け入れる」国から戦略的に「誘致する」国に転換する必要性を指摘する。新制度を転換に向けた好機と位置付けたい。

(2023/10/20 05:00)

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