社説/中国の「黒鉛」輸出規制 調達先多様化し日中対話継続を

(2023/12/4 05:00)

中国政府は1日から、電気自動車(EV)の電池などに使う「黒鉛」と関連品目の輸出規制を始めた。黒鉛の輸入を中国に依存する日本企業は、調達先の多様化や次世代電池材料の開発を進め、安定調達できるサプライチェーン(供給網)を構築したい。他方、日中両政府は11月14日、輸出管理について対話の場を設けることで一致しており、報復合戦を回避する意思疎通も継続して行う必要がある。

中国は黒鉛の輸出を許可制とし、中国包囲網に動く日米欧を牽制している。欧州連合(EU)が域内に輸入される中国製EVに対し、中国政府の補助金で不当に廉価でないか調査を始めたことが発端。不当廉価が確認されれば中国製EVは標準税率以上の関税が課される。日米も先端半導体・関連製品で事実上の対中輸出規制を講じており、今回の黒鉛は対象国を絞らずに輸出規制を講じている。

中国はEVの世界シェアの拡大に力を入れている。黒鉛の輸出規制により自国に有利な競争環境を整える狙いもある。中国は世界最大の黒鉛の生産国で、世界生産の6割以上のシェアを握る。日本の黒鉛の輸入は9割以上も中国に依存している。

日本政府は2022年に豪州と、23年9月にカナダと重要鉱物の安定的なサプライチェーンの構築で合意。さらに米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は、参加14カ国が重要鉱物の融通で協力関係を築くことで11月に合意している。IPEFには黒鉛を生産する豪州、インド、ベトナムが含まれており、安定調達に向けた結束力を強めたい。

日本企業は調達先の多様化に加え、シリコン負極材などの代替材料も想定しておきたい。

日中両政府が対話を重ね、報復合戦を未然に防ぐことが最も肝要だ。両政府が創設する日中輸出管理対話は今回の黒鉛にとどまらず、中国が8月から輸出制限したガリウムなどの希少金属も対象になる。中国は黒鉛、ガリウムとも数量制限を設けていない。日中は安全保障に抵触しない分野で互恵関係を探り、距離を徐々に縮めていきたい。

(2023/12/4 05:00)

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