社説/東電・柏崎刈羽原発 再稼働へ前進 電力の安定供給に期待

(2023/12/7 05:00)

事実上の運転禁止命令を出されている東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)が、再稼働への歩みを進めた。原子力規制委員会は6日、テロ対策を含む同発電所の課題が改善し、東京電力ホールディングス(HD)に原発事業者の「適格性」があるとした原子力規制庁の報告書案を了承した。規制委は早ければ年内にも運転禁止命令の解除を最終判断する。再稼働に必要な地元の同意が得られるかが今後の焦点になる。安全最優先を大前提に、電力の安定供給体制が再開すると期待したい。

原子力規制庁はテロ対策を含む27項目の課題を調査し、すべて改善したとの報告書案をまとめた。強風・大雪などの厳しい自然環境でも侵入者を検知する監視体制や、セキュリティー向上への取り組みなどを確認。核物質防衛上の問題が発生しても「自律的に改善できる仕組みが定着しつつある」と指摘。原発事業者の適格性があると規制委に報告し、了承された。

規制委は現地調査や東電の小早川智明社長との面談などを経て、運転禁止命令の解除を最終判断する。規制庁の追加調査は延べ4268時間に及んでおり、今回の報告を原発再稼働の実現に確実につなげてもらいたい。再稼働には地元同意が必要であり、地元の不安を拭う丁寧な説明を尽くしてほしい。

柏崎刈羽原発では、社員によるIDカード不正使用や侵入検知設備の故障放置などが相次いで発覚していた。今後は安全対策に万全を期し、電力安定供給の重責を担ってもらいたい。

日本のエネルギー自給率は1割(21年度)にとどまる。電源構成の7割強を化石火力に依存し、原子力は7%、再エネは20%に過ぎない。再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、安全を確認できた原発を最大限活用する岸田文雄政権の政策転換は、自給率の向上と脱炭素につながり、現実的な政策判断である。新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代型原子炉の実用化は30年代とされ、少なくともそれまでは再生エネと既存の原発を最大限に活用し、電力の安定供給体制を堅持したい。

(2023/12/7 05:00)

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