社説/与党税制改正大綱 脱デフレ期待も財政規律に懸念

(2023/12/15 05:00)

自民、公明両党は14日、2024年度の与党税制改正大綱をまとめた。1人当たりの所得・住民税を4万円減額する定額減税や、企業の賃上げや国内投資を促す優遇税制など「減税」措置が並ぶ。内需喚起とデフレ脱却が促されると期待したい。

一方、防衛増税や扶養控除の縮小といった「増税」は決定を先送りした。日本経済が「金利のある世界」に戻れば国債費が増額し、財政はさらに圧迫される。税収中立の観点からも、財政規律への配慮を再考する時期を迎えつつあると留意したい。

個人向け税制改正では定額減税のほか、子育て世帯に配慮した措置が目立つ。同世帯と若い夫婦の世帯に限り、住宅ローン減税の借り入れ限度額の引き下などを見送っている。児童手当の拡充などの予算措置と合わせ、子育て世帯の負担軽減が内需の喚起や少子化対策につながるのか、効果を注視したい。

企業向け税制改正も個人向けと同様、減税項目が並ぶ。半導体や蓄電池など重要物資の国内での生産量に応じ、法人税を減額する税制を10年実施するほか、特許など知的財産で得た所得に税額控除を適用する制度も創設する。23年度末が期限の賃上げ促進税制は3年延長した上で税額控除を拡大したほか、赤字の中小企業には繰越控除を設け、黒字時点で減税の恩恵を受けられるようにする。中小企業による円滑な価格転嫁も実現し、24年春闘に弾みを付けたい。

他方、防衛費増額の財源となる法人、所得、たばこ増税は開始時期の決定を先送り、子どもが高校生の世帯への扶養控除の縮小も正式決定を見送った。24年10月から高校生も児童手当を受けることに伴う措置だが、内閣支持率が低下する中で「増税」を今回の大綱から排除しようとの与党の思惑がのぞく。

日銀は24年春闘を見極め、金融政策の正常化を検討する。国債を大量購入して金利を抑える政策が転換され、利上げに伴って国債費も引き上がる。政府は国債の安定的な受け皿を失い、財政負担も増す。24年春闘をデフレ脱却とともに財政健全化に向けた起点とも位置付けたい。

(2023/12/15 05:00)

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