社説/金融正常化と財政健全化 24年春闘を政策転換への起点に

(2024/1/25 05:00)

産業界の意欲的な賃上げが、金融政策正常化と財政健全化を促すと期待したい。賃金と物価がともに上昇する好循環を日銀が確認できれば“金利のある世界”が視野に入る。金利の上昇で国債費が膨らめば、政府による過度な歳出圧力が緩和に向かう契機になり得る。2024年春季労使交渉(春闘)が日本の経済財政運営に修正を迫る起点となることが期待される。

日銀が金融政策の正常化へ一歩踏み込んだ。植田和男総裁は23日の会見で賃上げ機運の醸成を受け、物価目標達成の「確度が高まっている」と指摘。その上で、マイナス金利政策を解除した後の金融環境にも言及し、解除後も「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と続けた。

日銀は4月にもマイナス金利政策を解除し、市場を混乱させないよう慎重に利上げのタイミンングをうかがうとの見方が有力だ。金利のある世界は企業に収益基盤の強化を迫り、日本経済の拡大均衡が期待される。

金利のある世界が財政健全化を促すかも注視したい。政府は25年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を目指すが、1・3%の実質成長率を実現しても1・1兆円の赤字になるなど財政事情は深刻だ。内閣府が22日に公表した試算で分かった。

PBは税収・税外収入と政策的な歳出との収支で、黒字なら借金に頼らずに歳出を賄える。25年度の実質成長率を0・8%としたベースラインケースではPB赤字額は2・6兆円に膨らむ。少子化対策や防衛費の財源も担保できておらず、国債依存が高まれば財政健全化がさらに遠のくことに留意したい。

24年度予算案で国債費の想定利回りが1・9%(23年度は1・1%)に17年ぶりに引き上げられた。日銀の政策修正に伴う金利上昇を見据え、財政負担が増している。金利のある世界となれば、さらに負担は増す。政府は歳出改革と成長戦略を進め、財政規律を取り戻したい。

24年春闘が24日に事実上スタートした。財政・金融政策に転換を迫る好調な回答が相次ぐのか、期待しつつ見守りたい。

(2024/1/25 05:00)

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