社説/KDDIなど相次ぐTOB 拡大均衡の事業戦略に転じたい

(2024/2/8 05:00)

TOB(株式公開買い付け)に動く企業が増えている。自社では完結しない新たなサービスの開拓や、周辺事業の深耕を目的に経営権を取得する事例が相次ぐ。日本経済はコストカット型の縮小均衡から拡大均衡への転換が求められ、こうした動きが加速することを期待したい。

KDDIは4月にもローソンにTOBを実施する。出資比率を2・1%から50%に上げ、すでに50%を保有する三菱商事と共同経営する。KDDIとローソンの顧客基盤を連携し、コンビニエンスストアの店舗と通信技術を融合した新サービスを構築するという。コンビニは人手不足に悩み、携帯電話は成熟市場である。両社が相乗効果を発揮して新たな経済圏を創出し、課題を克服すると期待したい。

ローソン店舗でのリモート接客やKDDI商品(銀行、保険、ヘルスケアなど)の提供、KDDIのデジタル変革(DX)技術を活用したローソン店舗の運営最適化も進めるという。デジタル技術を駆使した新たなコンビニ像を示してほしい。

第一生命ホールディングス(HD)は2月中旬をめどに、企業向け福利厚生サービスのベネフィット・ワンにTOBを実施する。生命保険は人口減に伴って国内市場が縮小しており、周辺事業を開拓することで顧客基盤を強化する狙いだ。日本生命保険も2023年11月、介護事業最大手のニチイ学館の親会社買収を発表した。KDDIやローソンと同様、既存市場にとどまらない拡大均衡の事業戦略として今後の動向が注目される。

23年のTOBは60件を超え、ニデックによる工作機械メーカー・TAKISAWAへのTOBもその一つだ。「同意なき買収」とされたが、最終的にはTAKISAWAが「企業価値の向上に資する」とTOBを受け入れ、友好的な買収となった。

経済産業省は同意なき買収の行動指針で、買収する側とされる側双方の企業価値向上や株主利益に資する買収提案は真摯(しんし)に検討するよう求めている。TOBの活用が産業界の新陳代謝と新価値創出につながると期待し、今後の動向を注視したい。

(2024/2/8 05:00)

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