社説/日本経済「2040年」(下)原発・再生エネで脱炭素推進を

(2024/5/6 05:00)

政府は中長期のエネルギー政策の指針「第7次エネルギー基本計画」を2024年度中をめどにまとめる。35年度以降の電源構成が焦点になる。脱炭素とエネルギーの安定供給、さらに経済成長を実現する電源構成とする必要がある。ただ原子力発電所の再稼働が進まず、再生可能エネルギーも出力制御の問題を抱える。30年度目標の達成が危ぶまれる中、35年度以降の目標をいかに打ち出すのか、月内にも始まる議論を注視したい。

現行の第6次エネ計画は、30年度に温室効果ガス(GHG)を13年度比で46%削減する目標を掲げる。電源構成は30年度に原子力20―22%、再生エネ36―38%を想定する。だが22年度実績は順に5・5%、21・7%にとどまる。目標達成への道のりは遠いと言わざるを得ない。

日本のエネルギー自給率は1割強に過ぎず、電源の7割を火力発電に依存する。ウクライナ情勢や中東情勢はエネルギーの安定供給を脅かし、電力料金の高騰を招きやすい。日本は再生エネを主力電源化しつつ、ベースロード電源(低コストで安定供給できる電源)となる原発を最大限活用する必要がある。

ただ、東京電力は柏崎刈羽原発7号機の原子炉に核燃料を入れる作業を終えたものの、地元同意の見通しは立っていない。原発の最大限活用へとエネ政策を転換させた岸田文雄政権が前面に立ち、地元の理解を醸成してほしい。再生エネも、発電量と使用量を均衡させる出力制御を迫られ、電力を蓄えておく蓄電池の整備が待たれる。蓄電池を拡充しつつ、曲がる太陽電池「ペロブスカイト」や浮体式洋上風力発電などの供給力も強化し、主力電源化を目指したい。

先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は4月30日の共同声明で、排出削減対策のない石炭火力は2030年代前半に廃止すると決めた。日本は石炭火力が発電量の3割を占める。電力の安定供給が懸念されるが、温室効果ガスの排出削減につながる石炭とアンモニアの混焼などは廃止の対象外とされる。日本は多様な手段を講じ世界の脱炭素に貢献したい。

(2024/5/6 05:00)

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