産業春秋／五輪のウラオモテ

『ドラえもん』のひみつ道具、ウラオモテックスをご存じだろうか。小さな四角のシートで、体に貼られた人はウラで秘密にしていることを人前でオモテにさらけ出してしまう。

東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件は、広告大手ＡＤＫホールディングス（東京都港区）のトップが逮捕される異例の事態に。『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などアニメ番組の制作で子どもの夢を育む企業の不祥事は残念でならない。

国立競技場の建て替えをめぐる混乱、エンブレムの盗作疑惑、女性蔑視発言にコロナ禍での強行開催―。今度は大会関係者の汚職容疑が次々と明らかになり「呪われた五輪」の闇は深まるばかり。

「復興五輪のコンセプトはどこかへいってしまった」。震災から立ち直った中小企業の経営者が残念がっていたのを思い出す。そのウラで多額の賄賂が飛び交った疑いがある。

東京大会のレガシーはコンプライアンス（法令順守）の反面教師として五輪史に刻まれよう。札幌市が招致を目指す２０３０年冬季五輪は組織委員会から独立した審査機関を設けるなど教訓にしたい。ウラオモテのない大会にしなければ選手や国民、入札に参加する企業が浮かばれぬ。