[ オピニオン ]
(2016/2/16 05:00)
内閣府が15日に発表した2015年10―12月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比年率1・4%減と2四半期ぶりに悪化した。実質賃金の伸び悩みで悪化した個人消費など国内需要が低迷したため、事前予想どおりのマイナス成長となり、わが国の景気は踊り場から抜け出せずにいることが明らかになった。
同時に発表された15年暦年の実質GDPは前年比0・4%増と辛うじてプラス成長を記録した。しかし、ここ4四半期のうち半分の2四半期がマイナス成長だった。16年1―3月期次第で、15年度がマイナス成長となる危険性もある。このため夏の参院選に向けて追加の金融緩和や景気対策を求める声が大きくなりそうだ。
今後を展望すると、政府は官民対話を通じ、経営者に対して賃上げや設備投資を積極化するよう呼びかけ、経済の好循環を生み出そうと必死になっている。しかし年初からの株安の影響で、1月の消費者態度指数が4カ月ぶりに低下したほか、企業収益の伸びもわずかながら鈍化しているため、悲観的になりがちだ。
世界経済の先行き不安を背景とした狼狽(ろうばい)売りで、株価は先週末に1年4カ月ぶりの1万5000円割れ。為替は安全資産の円を買う動きが加速して1年3カ月ぶりの円高水準となっている。こうした状況が長引けば、企業や家計のマインドが一層冷え込んでGDPの下振れは避けられない。
世界的な不安の要因は中国経済の減速、原油安に伴う米国経済の先行き懸念、欧州の金融不安にある。これら要因に市場が過剰反応し、負の連鎖を起こしているのが実情。近く開催される予定の主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で政策調整が行われれば市場は落ち着くだろう。
世界経済に懸念材料は多いが、日本経済は比較的堅調。企業収益は引き続き高水準にあり、失業率3・3%、有効求人倍率1・27と雇用環境も良好だ。企業は株式・為替市場の混乱に惑わされることなく、足元を冷静に見つめて、賃上げや設備投資を前向きに判断してほしい。
(2016/2/16 05:00)