[ 機械 ]

【別刷特集】新潮流つくるレーザー加工技術

(2016/12/14 10:30)

 工作機械業界にレーザー技術の応用による新しい潮流が目立ってきた。従来装置に高度化に伴う手詰まり感がある中、レーザー関連の機械装置が増加。従来の工作機械にレーザーを直接取り込む、またはレーザーとの複合や融合を図り、レーザー微細加工機やレーザーと工具を組み合わせた光造形加工機が出現している。また、従来の炭酸ガスレーザーに代わってファイバーレーザーが台頭し、その割合は拡大しつつある。

◇中央大学研究開発機構教授・レーザ協会会長 新井 武二

モノづくり業界に革新

  • 表1.レーザー加工技術の種類

 日本の高出力レーザー加工は、従来の熱加工の代替技術として導入された。同時に加工ノウハウも発展し、生産性や加工技術でモノづくり業界に技術革新をもたらした。その後、レーザーで成し得る新しい加工を模索する時代に突入。現在は薄板などの切断加工では、精度面で機械加工に匹敵、もしくはしのぐまでになった。また、レーザー発振の短波長化や短パルス化に伴い、レーザーの特徴を生かした微細加工が開発されてきた。近年はレーザー照射で、材料表面に新しい機能を付加するレーザー表面改質や表面機能化する技術も注目を浴びている。

 また、モノづくりの歴史を塗り替えると思われる金属材料による3次元光造形技術(3Dプリンター)が出現している。使用レーザーは400ワット―1キロワットファイバーレーザーとの組み合わせが多い。積層造形に最適な粒度とともに、鉄系、チタン、アルミ系などの金属パウダーが選択できる。異種金属でも高密度な造形ができ、航空機、医療、金型などの精密部品に適応可能だ。また、レーザー積層や光造形技術の後工程として工具で表面加工を施すなど、加工に独自色を出してきている。

 最近のJIMTOFにみるレーザー機種別の割合は、ファイバーレーザー加工機が30%強、3Dプリンター装置が25%、発振器12%、レーザー微細加工機が20%弱、レーザー補修用加工機などが16%となる。回を重ねるごとにレーザー関連機器の出展数は増加している。

 レーザー加工機はファイバーレーザーが主役となっている。ファイバーレーザーは集光性が良く、従来の炭酸ガスレーザーに比べ薄板加工では高速加工が可能だ。一方で、比較的厚板加工では面粗さの点で以前は難があったが、最近は面粗さや精度も改善している。

  • 表2.レーザー加工技術の多様性

 今日では切断用ファイバーレーザー加工機は6キロ―8キロワットと高出力化による高速加工化が進む。加工速度は軟鋼9ミリメートルの場合で従来比1・5―2倍と飛躍的に向上。駆動系にはリニアサーボモーターを使用し、高剛性フレームによる高精度加工を実現。省エネ対応ではON/OFFの高速制御が可能で軸停止ゼロなどの機能が付加されている。加工ヘッドの軽量化などで加工時間は従来比50%以上削減している。

 この他、ロボットと直結したファイバーレーザー溶接システムや複合マシンもある。長尺材の角パイプ、円管を加工可能な3次元5軸のレーザーヘッドを持つレーザー加工機も登場。自動供給が行え、長尺パイプ用のチャッキングと回転テーブルを用いて加工する。建築部材などは丸型や角型の小径パイプを切断後、そのまま高精度ではめ込みができる。

 製造業のIoT(モノのインターネット)活用が動き始めている。FA(ファクトリー・オートメーション)技術とIT活用は世界的な傾向で、日本のレーザー業界もその動きが見られる。センシング技術も充実し、装置の運用・コスト管理、保守、生産支援サービスとして遠隔地からのリモートサービスが進んでいる。

当初はユーザー側が加工内容、稼働時間などが把握されることを望まない場合もあったが、故障時の診断がタイムリーに行えるなど装置の維持管理にもメリットが多大で、順次受け入れられている。

 微細レーザー加工機は、パルス幅が10ピコ秒以下の高ピークな短パルスレーザー光を用いて微細除去加工を行う。精密な光学系ヘッドで微細穴あけの精密加工を行え、波長変換も可能である。その結果、加工面への熱影響を抑制し、穴あけでは放電加工を上回る寸法精度を期待されている。5軸制御が可能な加工ヘッドにより曲面形状や複雑形状に対応可能。レーザー加工では、微細加工や機能性薄膜形成など新たな機能性を付加する多様な加工プロセスが提案され、製品の性能向上や高機能化に寄与している。

 レーザー加工は他の機械加工法に比べユニークである。レーザーの熱加工への代替加工技術が一般化し、また、ファイバーの利用や光伝送技術、光分岐技術、リモート加工など光の特性を巧みに利用した技術展開が見られた。レーザーでしか成し得ない加工法もかなりあり、レーザーは昨今のモノづくりの主要な技術となっている。レーザー加工に対する潜在的な需要は依然高く、新しいレーザー応用生産装置の出現がさらに創造的加工技術を創出し産業技術を大きく変えていくと予想される。レーザー技術は今後に大きく花開くものと思われる。

【11/16付本紙別刷「JIMTOF2016特集」より】

(2016/12/14 10:30)

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