産業春秋/“能ある鷹”の特許出願非公開

(2024/4/30 05:00)

「能ある鷹は爪を隠す」時代になったと言えばよいのか。防衛・軍事に関わる特定技術分野の特許出願非公開制度があす5月1日にスタートする。

特許制度は特許を公開することで発明を奨励し、産業の発展に寄与するのが目的だ。非公開は目的に反することになるが、2022年5月に成立した経済安全保障推進法に基づいて行われる。

対象は航空機のステルス技術やミサイルの誘導、弾道、防御技術など、安全保障に多大な影響を与え得る19技術分野。経済活動に甚大な被害を生じさせる核関連など6技術分野。外国出願も含め特許庁・内閣府の審査を受け、該当技術は保全指定となる。

技術を隠す必要性は防衛・軍事に限ったことではない。このところ海外工場に先端技術を移転しない、核心のノウハウは社外に出さないなどの対応が増えている。高性能磁石や太陽光パネルなど、中国への技術流出で競争力を失った教訓からだ。

文頭のことわざは戦国時代末期に関東を征した北条氏の「北条氏直時分諺留(じぶんことわざとめ)」が出典とされる。しかし、氏直の代で豊臣秀吉に征伐された。実力を過信したとも、策謀に陥ったとも言われる。爪を奪われては、いざという場面で勝ち目はなくなる。

(2024/4/30 05:00)

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