[ オピニオン ]
(2017/5/10 05:00)
将来の働き方に関わる重要な議論が、夏に向け急ピッチで繰り広げられる。企業実態に即した実効性ある制度となるよう、丁寧な議論を求めたい。
政府が「働き方改革実行計画」を策定したことを受け、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の実現に向けた法改正議論が労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で始まった。政府は労働基準法をはじめとした関連法案を一括改正する方針だ。
罰則付き上限規制を盛り込む労基法改正は、経団連と連合が大枠で合意し、労使間で大きな対立点は残っていない。
むしろ法改正へ向けた論点が多岐にわたるのが、非正規社員の処遇改善に向けた同一労働同一賃金の実現だ。労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法にまたがる。
例えば、労働者が司法判断を求める際の根拠となる「均等・均衡」待遇の規定は、パートタイム労働法では定めがあるが、他の法律では新たに整備しなければならない。従業員に対する待遇の説明の義務化や裁判外での紛争解決手続きをどう整備するかも焦点となる。
一方、継続審議中の労基法の改正案には経済界が求める高度プロフェッショナル制度の創設が盛り込まれている。2015年の通常国会に提出されたものの「残業代ゼロ法案」との批判を受け、審議されないままだ。
政府内では、継続法案を今国会で廃案とした上で、残業時間の上限規制などを盛り込む形で作り直す労基法改正案と一体化し、審議する案も浮上。経団連はあくまで継続法案の「今国会での早期成立を期待する」立場ながらも、新法案を通じた制度実現が現実的とみる。
残業時間の上限規制をめぐっては、労使の攻防が首相裁定によって決着した経緯がある。労使自治が原則であるはずの雇用政策まで、官邸主導が色濃くなる現状を嘆く声もある。
他方、正社員や長時間労働を前提とした硬直的な雇用システムがもはや成り立たないのは事実だ。歴史的な改革を企業競争力向上に結びつけるため、今度は経済界が知恵を絞る番だ。
(2017/5/10 05:00)