[ オピニオン ]
(2017/6/22 05:00)
山口県で産学官が連携して医療関連産業を育成する取り組みが花開きつつある。研究開発や企業誘致を進めるため、2013年に設立した「やまぐち医療関連成長戦略推進協議会」の会員数は203社・機関に増え、企業進出も増え続ける。選択と集中で得意分野に重点投資する姿は、他地域の模範となる。
「地域としての強みを明確に打ち出した結果が効果を生んでいる」。協議会の会長を務める山口県の弘中勝久副知事は胸を張る。協議会の幹事会には武田薬品工業、田辺三菱製薬工場(大阪市淀川区)、テルモ山口(山口市)の各工場長や山口大学の医学・工学部長など、産学官の代表が名を連ねている。
瀬戸内に素材産業が集積する山口県には、もともと化学のほか医療やバイオ関連企業の集積が進んでいた。東日本大震災以降は事業継続計画(BCP)の観点から、拠点確保を求める企業が増えた。
地震発生回数が全国3位の少なさであり、陸海空のインフラが整っていることも立地を検討する企業の魅力になっている。14年以降だけでも大陽日酸や小野薬品工業など6社が進出・工場増設を決めた。
県は最大30億円の企業立地促進補助金や、先進的研究開発に補助する「やまぐち次世代産業育成チャレンジアップ補助金」など各種優遇施策を用意する。呼応するように、地場企業もYOODS(山口市)の眼球運動解析ソフトウエアや、ミヤハラ(周南市)の吻合補助器など、多くの製品、技術が生まれている。
山口県は若年者の流出に苦しむ。18歳と22歳の県外転出者数は年間2000人と多い。福岡市や広島市のような中核都市がなく、魅力ある職場を確保できない現状に頭を抱える。
地方都市の多くは若年者の流出に苦しんでいる。最大の要因は大都市への人口の集中と地域を支える産業の衰退だ。打開策には新産業創出が不可欠で、山口県は医療関連に活路を見いだしつつある。取り組みは緒に就いたばかりだが、課題克服のモデルケースになりそうだ。
(2017/6/22 05:00)