[ オピニオン ]
(2017/7/21 05:00)
すべての人が安価に保健医療サービスを受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)をテーマとした日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の初の保健相会合が開かれた。日本はその知見を生かして、急速に高齢化が進むASEAN各国の課題解決を支援し、国内関連産業の現地展開にも積極的に関与してほしい。
会合には塩崎恭久厚生労働相をはじめ各国の保健相、世界保健機関(WHO)、世界銀行、アジア開発銀行などの代表者らが参加。共同宣言とUHCイニシアチブを採択した。
2030年までの持続可能なUHCの達成に向けて、保健データを作成するための基盤となる住民登録や人口動態統計の普及を各国で推進。UHCに関連する栄養や運動などをテーマとした共同研究を進め、日本での研修や専門家の派遣などを通じて、保健医療政策に関する人材育成にも取り組む。
ASEAN各国の高齢化は、日本を上回る速さで進むことが予想されている。日本の高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が7%から14%になるのに要した時間は、先進国で最も短い25年間だった。これに対し、ASEAN各国は20年前後と日本より早まる見通しだ。
経済成長による医療制度の充実や少子化が進むことが背景にある。人口構成が急激に変化する中、早晩、医療制度が課題に直面するのは明らかで、持続可能なUHCを早期に構築することが不可欠だ。
高齢化やUHCを共通課題として取り組むことは、経済的な価値も期待できそうだ。具体的な協力として、日本とASEANで薬事規制の調和を進める方針だ。これにより、効果の高い医薬品・医療機器の承認の早期化が考えられる。
さらに日本が取り組みを主導することで、各国でこの分野に関する日本ブランドの確立にもつながる。日本の医療・介護サービスや、医薬品・医療機器産業などの現地展開にも追い風となりそうだ。取り組みを通じて、国内医療関連産業の飛躍にもつなげてもらいたい。
(2017/7/21 05:00)