[ オピニオン ]
(2017/8/4 05:00)
新内閣が発足した。安倍晋三首相は政権運営の軸足を経済最優先に置き、2019年10月に予定する消費増税を確実に実施するよう、地歩を固めてもらいたい。
支持率が急落する中にあって、新内閣は閣僚経験者を多く起用し、実務重視を鮮明にした。政権の立て直しのためには当然といえよう。ただ今後、支持率を気にするあまり、痛みを伴う改革を先送りすることはあってはならない。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」は“脱デフレ”を最優先に掲げ、金融政策と財政出動を強力に展開してきた。デフレさえ退治できれば、消費増税や賃上げも実現しやすくなる。しかし4年半を経ても十分な効果が表れていない。
このまま同じ政策を継続していていいのか。消費増税が遠のき政府が十分な財源を確保できなければ、それだけ財政や社会保障制度の持続可能性が失われる。産業界には、強い危機感がある。
足元の国内景気は力強さを欠くとはいえ、底堅い。12年12月に始まった景気拡張は「いざなぎ景気」の57カ月に並び戦後2番目となる。経団連の榊原定征会長は「3度目の(消費増税)延期という選択肢はない」と、政権が安易なポピュリズムに走らないようクギを刺す。
消費増税を実現するには歳出の見直しは当然として、増税が家計に還元されることが実感できる状況を作り出す必要があるだろう。若年層や子育て世代の生活は厳しさを増しており、これが消費低迷を招いている。シニア世代にばかり財源を振り向けるのではなく、子育て支援策の充実など若年層が豊かさを感じられる施策が急がれる。
政府は幼児教育・保育の無償化や待機児童解消に向けた施策を年内にまとめる。財政規律を守りつつ、ヒトへの投資をどう進めるか、本気度が問われる。
いま日本に求められるのは、持続可能な未来社会への道筋を描くことである。首相は目先の支持率だけでなく、中長期的な視点に立った政策運営を肝に銘じるべきだ。
(2017/8/4 05:00)