[ オピニオン ]
(2017/8/28 05:00)
国際海事機関(IMO)の硫黄酸化物(SOx)排出規制強化に対して、海運業界と石油業界は官民連携による情報共有の場を最大限に生かして対応し、業界の発展につなげたい。
船舶の燃料油に含まれる硫黄分濃度を現状の3・5%以下から、2020年1月に0・5%以下とする国際規制がIMOの海洋環境保護委員会で決まった。これを受け、国土交通省と経済産業省・資源エネルギー庁は、関係者間の意見をすり合わせる連絡調整会議を創設し、活発な議論を交わしている。
規制強化により、現在多く使用されているC重油はそのままでは使えなくなる。対応策として(1)低硫黄燃料油への切り替え(2)排ガス洗浄装置(スクラバー)の使用(3)液化天然ガス(LNG)など代替燃料の使用―の三つの手段が上がる。
8月上旬の会議で公開された需要側と供給側の調査結果によると、インフラ整備が道半ばのLNG燃料への切り替えは、20年までの短期間では現実的でない。また、数億円のコスト増と搭載工期が必要なスクラバー対応も20年時点では「ほとんどない」とされた。
一方で、原油を軽質化させることで船舶用低硫黄燃料油の供給は素需要量約870万キロリットルを満たせるとの調査結果も示された。ただ需要側が求める低硫黄C重油の需要量約600万キロリットルに対し、供給量は約150万キロリットルと大きな開きがあった。
石油連盟は原油の軽質化で規制適合燃料を供給する場合、年約1500億円の生産コスト増が見込まれると試算している。
内航船は経営コストに占める燃料費の割合が30%超と高い。燃料価格は市場取引で価格が決まるため一概には言えないが、価格上昇が海運会社の経営に深刻な影響を及ぼす恐れはある。
SOxや粒子状物質(PM)による健康や環境への悪影響を低減することは、環境先進国としての役目だ。一方でどの手段を取るかは企業個々の判断である。スピード感を持って議論を深め、需要側、供給側に不公平感を生まない政策支援も検討する必要があるだろう。
(2017/8/28 05:00)