[ オピニオン ]
(2017/9/21 05:00)
大手スーパーチェーンによるプライベートブランド(PB)商品の値下げが目立つ。節約志向の消費者の需要を喚起する狙いのようだが、取引先の中小納入業者に過剰な値引きを求めないよう願いたい。
日本経済はデフレ脱却に向けた苦しい歩みを続けている。原材料や人件費の上昇は、小売りの最前線の商品にも価格上昇圧力として働いている。スーパー店頭ではナショナルブランドの食品類の値上げが目立つ。
異常気象などで輸入原料の相場が上昇傾向にあることも理由のひとつだ。農林水産省は10月期から、輸入小麦の政府売り渡し価格を3・6%値上げする。また新興国の賃金がじりじりと上がっていることも、従来のような安値を武器にした商品政策に影を落としている。
小売りの隣接業界では、均一価格を売りにしてきた低価格の居酒屋チェーンが値上げに踏み切ったり、宅配便業界で運賃が引き上げられたりしている。消費者には不満もあろうが、デフレ脱却を目指すためには避けて通れない問題だ。
こうした経済環境で、大手スーパーがPBを値下げすることに違和感がある。個々の企業努力を否定するものではないが、果たして合理的な原資が確保できているのだろうか。もし取引先に納入価格引き下げを迫っているだけだとしたら、立場の弱い中小の問屋などが収益を奪われる恐れが大きい。
実際のPB商品を見ると、袋物のパン類や菓子の封入数を減らしたり、パック飲料の容量を減らすなどして値下げしたケースもあるようだ。消費者の購買意欲を維持するための工夫であろうが、こうした価格ありきの訴求手法に頼っている間は“デフレの風”が吹き続ける。
大手冷凍食品メーカー首脳は「特売前提や最初に価格ありきの状況では、品質やおいしさ向上に必要な研究開発費も出ない」と嘆く。品質の維持向上の投資が後手に回れば、最終的に損をするのは消費者だ。PB商品の値下げ戦略にはデメリットもあることを理解し、注視していく必要があろう。
(2017/9/21 05:00)