[ オピニオン ]
(2018/4/5 05:00)
「統計データの利活用」を、どう産業や人材の育成につなげるか。和歌山県が、新たな地方創生策に取り組んでいる。
総務省と独立行政法人統計センター(東京都新宿区)が、共同で和歌山市に「統計データ利活用センター」を開設した。政府関係機関の地方移転の一環で、高度なデータ解析などを担当する先進拠点を市内の民間ビルに設けたものだ。
同じフロアには、和歌山県が「和歌山県データ利活用推進センター」を併設した。県はこれを機に、日本のデータ利活用の拠点になるビジョンを描く。「統計は国のベースをなす大事な仕事。ビッグデータ、人工知能(AI)につながるような話だ。いいものが来て頂いたと思って大変、喜んでいる」―。仁坂吉伸知事は会見で、センターへの期待をこう述べた。
国の出先機関である統計データ利活用センターは、セキュリティーの整った施設という利点を生かし、通常は公表していない詳細情報(統計ミクロデータ)を提供する。学術研究や公的利用を想定している。従来は協力協定を結んだ少数の大学しか使えなかったデータを、より多くの研究者らが利用できる。
このほか、政策立案に役立つ統計データ利活用や、研修会、セミナーなどを通じた人材育成に取り組む。また併設した県のセンターでは複数のデータを連携させた分析・研究に取り組む。2018年度はAIを用いた会員制交流サイト(SNS)情報の抽出・蓄積と、医療・健康データを取り上げる。
県は、16年に「和歌山県データ利活用推進プラン」を策定。「統計的思考・エビデンスに基づく行政の推進」「データ利活用による県内産業の活性化」などの基本目標を掲げた。
データ利活用が盛んになれば、県内企業の商品開発や販路開拓、行政の政策立案が「経験や勘」から脱するきっかけになる。仁坂知事は「このやり方がはやってくると、和歌山発で日本がものすごく元気になるプロジェクトになる」と期待する。地方創生の具体策の一つとして大いに学びたい。
(2018/4/5 05:00)