[ オピニオン ]
(2018/4/26 05:00)
企業年金は、加入者と資産運用機関を介在する機関投資家として、加入者の利益確保のためにスチュワードシップ活動を積極化すべきだ。企業年金の母体企業は、利益相反を管理した上で、その取り組みを後押しすることが求められている。
企業年金は、他人から預かった資産を責任を持って管理運用するスチュワードシップ責任を果たす必要がある。2014年に機関投資家向けの指針「スチュワードシップコード」が策定されたが、事業会社の企業年金によるスチュワードシップコードの受け入れは数件とごくわずかにとどまっている。
金融庁の有識者会議はこの点を問題視し、「投資家と企業の対話ガイドライン」をまとめた。企業は自社の企業年金が運用の専門性を高めて期待される機能を発揮できるよう、適切な人材の計画的な登用や配置などの人事面や運営面の取り組みを行っているかという観点を盛り込んだ。
企業年金のトップには、知識や経験にかかわらず、母体企業のいわゆる上がりポストの一つとして選任しているとの指摘もあり、改善が求められる。外部の専門家を招くのもいい。母体企業と企業年金の受益者との間に生じる利益相反を指摘する声もあり、人材配置には適切な利益相反管理が前提だ。
また、母体企業の規模が小さく、スチュワードシップコードに対する実務的な対応で負担が重い場合は、企業年金連合会などによる支援が必要になることもあろう。
企業年金の役割は、確定給付企業年金法第1条にあるように、加入者の高齢期における所得の確保に関わる自主的な努力の支援であることが基本だ。企業年金がスチュワードシップ活動を行うことで、資産運用機関に対する監視を通し投資先企業の企業価値向上や持続的成長を促し、中長期な投資リターンを拡大することにつながる。適切に役割を果たせば、日本経済の発展に貢献し、社会的な評価も高まる。企業年金の基本的な役割を念頭に責任ある行動をとるべきだ。
(2018/4/26 05:00)