[ オピニオン ]
(2018/7/10 05:00)
トランプ米政権の保護主義に軸足を移す通商政策という“逆風”に対し、日本のモノづくり企業は技術力で自衛したい。替えがきかないオンリーワン製品には、米政府もうかつに高関税を課したままの状態にしておきにくい。鉄鋼の輸入制限措置の対象から除外された不二越の熱延鋼板などが好例だ。
米商務省はこれまで課していた鉄鋼の輸入制限措置について、日本、中国、ドイツ、ベルギー、スウェーデンの5カ国から輸入する品目の一部を追加関税の適用除外にすると表明した。自国で調達しにくい製品を対象から外すことで、米国経済への影響を減らす狙いがある。
日本製品では、不二越の熱延鋼板のほか、JFEスチールの鉄鋼板、日立金属のステンレス製品、日本リークレス工業の取引先が製造するゴム被覆鉄板が適用対象から外された。除外品の選定は米国内の企業の声が反映されるため、米政府もむげにできない事情が見て取れる。
こうした状況を踏まえ、日本のモノづくり企業は、逆風下でも選ばれる製品開発を加速する契機にすべきだ。トランプ米政権は最短でも今後2年以上続き、通商政策での強硬姿勢は崩しそうにない。その後の政権が自由主義に舵を切るかも予測できない。それだけに、これまで蓄積してきた技術を生かす好機と考えたい。
日本政府には、オンリーワン製品の開発に拍車がかかる支援が求められる。モノづくり企業の技術力を伸ばすことで、米政府との交渉に利点も生まれる。交渉の場で替えがきかない製品を強調し、米政府の納得を引き出しやすくすれば、大きな波風を立てることもない。
トランプ政権が課した関税をめぐり、中国やEU(欧州連合)は報復関税を課すなどし、強気な姿勢で対応しているが、日本政府は腰が引けている感が拭えない。米国の後ろ盾が必要な安全保障問題もあり、米国の機嫌を損ねずに交渉しなければならない難しい状況もある。
モノづくり企業の技術力を生かす対応策で、官民一体となって逆風にあらがいたい。
(2018/7/10 05:00)