[ オピニオン ]
(2018/7/12 05:00)
プラスチックが今、強烈な逆風にさらされている。商品の包装材や容器などの“生活廃プラスチック”が海へ流出した海洋プラスチックゴミが欧州中心に社会問題化している。海中において紫外線や物理的な力で砕かれた直径5ミリメートル以下のマイクロプラスチックなどを魚介類が誤飲してしまう。海洋生態系への影響や、その魚介類を食べる人間への健康被害が懸念されている。ただ、日本化学工業協会の淡輪敏会長(三井化学社長)は「実際の数量などいろいろなファクトが曖昧なままに課題だけが取り沙汰されている」と危惧する。事実確認が全ての取り組みの出発点であるべきだ。
2050年までに海のプラスチックの量が魚の量を上回る―。そんな報告書が世界経済フォーラム(ダボス会議)で発表されたのは2年半前のこと。その後も規制強化に乗り出す欧州連合(EU)など海外の動きは速い。包装やレジ袋だけでなく、ファストフード店でよく見かけるプラスチック製ストローの販売禁止など風当たりは強まる一方だ。
しかし、センセーショナルな未来予測は環境問題に付き物で、額面通りに受け取ってよいものかどうか不透明だ。
日化協など関係5団体、22社は、協議会を今夏に立ち上げる方向で調整中だ。プラスチックによる海洋汚染の実態調査や対策だけでなく、問題に対する国際的な議論を主導する役割も求められる。このまま手をこまぬいていては、産業界を置き去りにしてプラスチック使用全面禁止など極端な流れが形成されかねない。
中国は17年末で容器など廃プラスチックの輸入を原則禁止した。こちらも環境汚染を理由とする。一方で、欧州や韓国には現在、行き場を失ったプラスチックゴミが大量に積み上がっているという。規制強化が唯一の答えとは限らない。
資源循環型社会は世界全体で構築しなければ、必ずどこかに歪みが生じることになる。独善的な急進策より、国際協調路線こそが問題解決の遠くても結果として近道になるはずだ。
(2018/7/12 05:00)