[ オピニオン ]
(2018/7/24 05:00)
大阪北部地震、西日本豪雨災害と西日本エリアはここ数カ月で大きなダメージを被った。特に豪雨災害は広島県や岡山県、愛媛県を中心に住宅や道路などの被害が大きく、多くの企業でも直接・間接的に影響が出ている。災害が起こるたび、企業には事業継続計画(BCP)の重要性が指摘される。ただ中小企業にはBCPの浸透が不完全で、問題意識が高まっている今、策定に取り組んでもらいたい。日刊工業新聞社は7月中旬、西日本に拠点を持つ42社に直近の災害を踏まえ、BCP策定の有無や、災害時にBCPは機能したかを問う緊急ヒアリングを行った。大手企業20社は全社がBCPを策定済みでそれに沿った行動を多くの企業が進めていることが分かったが、中堅・中小企業は22社のうち半分強の12社がBCPを策定していなかった。理由を問うと「策定ノウハウがなく、運用するのが難しい」「時間や人材が足りない」といった声が聞かれた。
ただ、被災地域の中小には「災害に対する備えの意識が低かった」「災害は対岸の火事ではないと思い知った」とする意見もある。少しでも当事者意識を持てるかが、災害対策には必要だ。自然災害が各地で多発する今の日本列島において、事業活動を行う土地の特性を、各自治体のハザードマップなどを参考に再点検し、地震、津波、水害といった複合災害を見据えたBCPを打ち出してほしい。
兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の室崎益輝科長は「事務所、工場の整理・整頓をするだけでも備えになる」という。また普段から、少人数でも現在の仕事をカバーできる検討や工夫をすることは、残業時間を減らし効率よく仕事を行う、働き方改革にもつながる。
一部の西日本地域は今回の洪水被害からまだ復旧途上だ。国がしっかり支援策を実行し、全国の企業・団体などから寄せられる義援金も役立ててほしい。「会社の持続的発展を考えるならBCPは必要。BCPに対応した体制がなければ、いい仕事はこない」。ある中小経営者の言葉を強く胸に刻みたい。
(2018/7/24 05:00)