[ オピニオン ]
(2018/9/25 05:00)
果たして日本の若者が内向きになったため、海外留学者が減っているのか―。経済協力開発機構(OECD)などによる統計を基にした調査では、日本人の海外留学者は年々減少しているが、中高生や社会人などを含めると、日本からの海外留学生は増加している。国際化教育を議論する際、海外留学生といえば大学生、という固定観念を一度振り払う必要がある。
文部科学省はOECDなどの統計を基に、日本人の海外留学者数を集計している。OECD、ユネスコ、米国国際教育研究所(IIE)などの2015年統計による日本人の海外留学者数を集計すると、5万4676人(前年度比236人減)。留学者数の多い国・地域は、米国1万9060人、中国1万4085人、台湾6319人となった。
一方、日本学生支援機構が実施した「協定等に基づく日本人学生留学状況調査」によると、大学などが把握している日本人学生の海外留学者は、16年度で9万6641人(同1万2185人増)となり、留学者数の多い国・地域は、米国2万159人(同1483人増)、オーストラリア9472人(同1392人増)、カナダ8875人(同686人増)が上位を占めた。
海外留学協議会(JAOS)が17年8月に行った日本人留学生数調査によると、16年の加盟の留学事業者40社の年間留学生数は7万9123人で、JAOSは他調査と合算すると日本人の留学生数は20万人超と推測できるとした。JAOSは、これまでの調査は大学のプログラムを利用せずに留学をした学生や、中学高校生の留学、社会人の語学留学については計測されていないと分析した。
大学生の海外留学を阻害する要因として、学費や生活費の捻出といった経済的理由や、休学扱いになり卒業が遅れ就職活動がしにくくなるといった実情がある。原因を「内向き志向」に矮小化せず、大学や企業が海外留学を支援する体制を整えることは不可欠。加えて中高生や社会人にも視野を広げた海外留学の後押しが求められている。
(2018/9/25 05:00)