[ オピニオン ]
(2019/2/5 05:00)
外国人の就業に門戸を開く改正出入国管理法が4月に施行される。少子高齢化が進む日本が、これからも成長するために必要な制度改革ではあるが、内なる潜在的な人材にもっと目を向けてもいいのではないか。
その一つが結婚や出産を機に仕事を辞め、子育てに専念してきた女性。就業を希望しながらも、求職活動をしていない女性は2017年は262万人に上る。ブランクを理由に就業をあきらめている人は少なくない。
構造的な人手不足に直面する日本にとって多様な人材の活用は喫緊の課題だが、ブランクのある主婦層は国の施策の「蚊帳の外にある」。こう指摘するのは『専業主婦が就職するためにやっておくべき8つのこと』の著書である薄井シンシアさん。実際、国が旗を振る「1億総活躍社会プラン」で、柱に据えるのは子育て支援や高齢者の就労機会の確保、障害者の活躍支援が中心だ。家庭を切り盛りする中で培われた主婦の調整能力や複数の作業を同時進行する能力を「自身も社会ももっと前向きに評価していい」(シンシアさん)との指摘は一理ある。
持つべき視点は、安価な代替可能な労働力としての再就職支援ではなく、就業機会を提供することによって継続的かつ、中核人材として活躍できる姿を描くことである。意欲や経験があれば、採用に前向きな企業は増えている。
女性向けの人材紹介を手がけるWaris(東京都港区)が経済産業省の実証事業として実施したホテル業界や観光サービス業への再就職支援プログラムでは、再就職に必要な知識や心構えの習得を経て、インターンシップ(就業機会)として実際に働く機会を提供した。
こうした実践的な取り組みを通じて、より多くの人が新たな一歩を踏み出すことは、人手不足の解消にとどまらない経済効果をもたらす。世帯収入の増加に伴う購買力の向上や、家事をはじめとする関連サービスの消費拡大が国内総生産(GDP)を押し上げることは言うまでもない。潜在的な人材活用で経済成長につなげたい。
(2019/2/5 05:00)