[ オピニオン ]
(2019/5/8 05:00)
現在、多くの企業では、人手不足問題を抱え人材の確保に苦慮している。全国的に支援員も不足中という課題はあるものの、さらなる就労支援の充実を図り、長期失業者から就職者を増やすことができれば、企業の人手不足対策にもなりうる。
15年前。毎月初旬、大阪府内の小さな郵便局横の現金自動預払機(ATM)前に、お年寄りや若者ら10人以上が朝から列をなしている光景を目にしていた。その後、行列のできる日が生活保護費の支給日だと分かった。それだけなら、大きな疑問は抱かなかったが、ある時、若い女性がそのまま数十メートル先のパチンコ店へ入って行く姿を見た時は違和感を覚えた。
2017年度の生活保護費の支給総額は、約3兆8000億円。近年はほぼ横ばいが続く。受給者数は214万人で、そのうち45・5%が65歳以上の高齢者だ。総額の半分は医療扶助で、生活扶助も3割を超える。
15年前に見た女性も健康そうに見えて、実は心身の病気だったのかもしれないし、娯楽による消費を制限する規定もない。ただ、もし健康で働ける状況にもかかわらず、受給期間が長くなる中で就労意欲を失い、就職していなかったとすれば大きな問題だ。ニートなども含めこうした長期失業者は多いと見られている。厚労省によると、長期失業者のうち35―44歳が2割を占めるという。年齢だけをみれば働き盛りの世代だ。
政府は、生活保護法の一部改正と生活困窮者自立支援法によって、15年度から就労支援を強化した。地域の相談支援センターなどの相談窓口の支援員が、相談者一人ひとりにあった自立支援プランを作成。相談者には、訓練用の就労体験あるいは雇用契約を結んだ支援付き就労が提案される。必要に応じてビジネスマナーや健康管理、コミュニケーションの取り方などの相談にものる。最終的には、一般の従業員と同じように働けるようにする支援内容だ。
就労支援を加速することで、地域経済維持にもなり、将来は、国の生活保護費支出抑制にもつながることを期待する。
(2019/5/8 05:00)